読書レビュー:『降伏論「できない自分」を受け入れる』(高森勇旗)

読書

読みたいと思ったきっかけ

たまたまYouTubeのPIVOT公式チャンネルに出ていた著者と楠木建氏の動画を見たのがきっかけ。

著者である高森勇旗氏は元プロ野球選手という異色の経歴。

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降伏論 「できない自分」を受け入れる [ 高森 勇旗 ]
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内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

まえがき ”一生懸命”という幻想
第1章 いますぐやる
第2章 考えずにやる
第3章 具体的にやる
第4章 価値の本質に気づく
第5章 言葉を変える
第6章 相手を勝たせる
第7章 自分を働かせる
第8章 自分の「在り方」を決める
第9章 自分の「状態」を高める
あとがき 好奇心を取り戻す

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

まえがき(”一生懸命”という幻想)

■一生懸命やれば、必ず報われる。必ずしもそうではないと頭では分かっていたが、どこかでその考えにすがりたい気持ちがあった。しかしそれは、「どうすれば結果を出すことができるか」という考えを諦めた者の思考回路である。”一生懸命”は現実を直視せず、結果に至るための具体的な方法を考えることを諦め、冷静さを失った者たちが生み出す幻想の世界だ。

■厄介なのは、当の本人たちは、自分が生産性の低い人間であることを決して認めようとしないことだ。しかし、「自分はこんなもんじゃない」と、本気で信じている割には、やり方は変えようとしない。なぜなら、そのやり方で一定の評価を獲得できたからである。

■結果が出ないのは、運が悪いわけでも、タイミングが悪いわけでもない。そして、一生懸命さが報われないわけでもない。いまの自分の延長線上に成功があると思っている限り、結果が出ることは、永遠にない。少なくとも、「俺は、こんなもんじゃない」と、思っているうちは。

■結果を出したければ「俺は、こんなもんなのかもしれない」と、諦めることだ。世の中に、成功する方法、結果を出すためのやり方に関する本がこれだけ溢れているのにもかかわらず、結果を出せないのは、自身が「俺も頑張れば、できる」という幻想の中にいるからだ。

第1章(いますぐやる)

■終了という言葉と、完了という言葉がある。両者には、どのような区別があるだろうか。時間などの外部要因によって物事が終わることを”終了”というのに対し、自らの意志によって区切りをつけることを完了という。”終了”の領域に分類されるイベントは、多くの場合「未完了」となり心の中に残り続ける。

第2章(考えずにやる)

■我々が扱っているもので、あまりにも無意識すぎて気がつかないものがある。それは、言葉だ。例えば、「明日から電車に乗らない」という大胆な意思決定は、それなりの資源(主にお金)を必要とする。しかし、「言葉を変える」は、自分が意図すれば、いまこの瞬間から実施できる上に、なんの資源も必要としない。そして、数ある言葉の中でも、自己変革の最初の敵であり、最強の敵となる言葉がある。それは「でも」だ。

■その代わり、「でも」が出てきた時に即座にその言葉を打ち消す言葉を用意しておこう。その言葉は、人によって違う。しかし、次の言葉は使いやすいので、ぜひ使ってみてほしい。それは、「はい!」「やってみます!」「知りませんでした!」だ。「まず、電車に乗るのをやめてみて」→「はい!」→「さっそくやって見ます!」→「成功している人は電車に乗ってないなんて、知りませんでした!」

■自己変革する上で最も手っ取り早く、そして強力なやり方は、うまくいっている人の真似をすることである。しかし、真似をしているつもりでも、結局は自己流になっていることがほとんどだ。なぜなら、考えるからである。考えてはいけない。真似をすると言うのは、0から100まで、すべて真似をするということだ。言葉、表情、間合い、姿勢、歩き方、履いている靴下のブランドまで、何から何まですべて真似をする。その中に、「ここは取り入れるけど、ここはやめておこう」という判断は入れてはいけない。

■本を読んで、何かの学びになったとしても、行動に移さないのであれば、本を読む前と何ひとつ変わっていない。非常に厳しい言い方をすると、ただ、本を読んだ時間だけを人生で消費したのである。その時間を、両親や愛する人に感謝の言葉を伝えたり、時間を共有したりしていた方がよっぽど価値があっただろう。

■できるところから少しずつ、ではダメだ。やると決めたら、いまこの瞬間から、端から端まで、すべてやる。

第3章(具体的にやる)

■このように、最終的な目標に至る過程を分解し、それを数値にし、その改善に向かって全力を尽くすことが、”具体的に動く”ということである。まずは、自らの目標を数値や、測定可能な指標にする。そして、現在地を明確に数値で表す。そうすると、目標と現状との間のギャップが、数値で現れる。

■そうはいっても、数をこなそうとすると、あらゆる障害が待ち受ける。それは、①に時間、②に体力と精神力、③に”楽をしたい”という欲だ。…だからこそ、この数の勝負に立ち向かったものだけが、”普通ではない”、売れる営業マンへと成り上がることができるのだ。

■目標を明確にし、プロセスを具体化し、自分の判断が極力介入しない状態で行動を起こす。まずは精度ではなく、行動量の方にフォーカスし、とにかく大量に行動を起こす。断じて、”一生懸命やる”という解決策に逃げてはならない。多くの場合、一生懸命やることが善だと捉え、そこに邁進する。無論、一生懸命やることは重要だ。しかし、そこで思考停止になってはならない。

■多くの人は、具体的に思考することを諦め、行動も起こさない。つまり、成果を出したいのであれば、具体的に考え、行動を起こす”だけ”でいい。ただこれだけのことで、多くの人たちと違いをつくることができる。成果を出すことは、実は非常にシンプルなロジックの上に成り立っているのだ。

第4章(価値の本質に気づく)

■問題解決というのは、実にさまざまな場面で発生しており、その度に価値が生まれ、その代替物である貨幣が動く。つまり、お金を稼ぐ、多くのお金を自らの元に呼び込むには、それだけ多くの問題を解決し、価値を生み出せばいいということになる。3000万円稼ぐというのは、3000万円分の問題を解決した結果である。労働した時間に対する対価ではなく、問題解決の量だ。たとえ1日の労働であっても、それが3000万円分の問題を解決したならば、それで3000万円の報酬を得ることも可能になる。

■いまの太った体では、”モテない”と思った時点で、現状は問題と化す。さっきまで問題ではなかった世界に、目標が現れた瞬間に、問題が同時に現れる。「恋人と楽しくドライブする」という中では、赤信号だろうが、前にクルマが割り込んでこようが問題にならない。しかし、「このままだと19時の予約に間に合わない」と、意図を持った途端に、赤信号が問題と化す。問題を顕在化する方法は、目標をつくり出すこと。そうすれば、問題は相対的にあらわれる。

第5章(言葉を変える)

■言葉は形が見えないだけで、実は世界を変えられるほどのエネルギーを内包している。言葉ひとつで生涯にわたって勇気づけられたり、言葉ひとつで人の命まで奪ってしまうこともある。言葉は、エネルギーの塊である。だからこそ、丁寧に扱う必要があるのだ。

■あいまいな言葉ではなく、明確な表現で言い切るだけで、自分の言葉に責任が生まれ、あいまいなことができなくなる。何も、金メダルを獲るような大きなことをやれと言っている訳ではない。日々の仕事や人生の中で、自らのパフォーマンスを上げる過程で、言葉の中からあいまいな表現、とりわけ「思う」を排除するだけで、覚悟と責任を生み出すことができる。

■自分のやることなすことを、一つひとつ、いちいち口に出して宣言し、言い切るクセをつける。これを続けていくと、自身の主張、決断力は驚くほど上がる。繰り返すが、頭や心の中で実際に思っていなくても、言葉”だけ”を変える。ただこれだけで、人生のあらゆる部分に変革が起こり始める。これからは、「いつかああいう大きなお家に住みたいな」という願望を口から出すことを封印し、「3年以内に200㎡以上の家に引っ越す」と言ってみる。

■「質問してもよろしいでしょうか?って、ダメって言われても質問したいんでしょ?だったら、「質問があります」と言って、勝手に会話に入ってこい。ダメだったら、『いまダメだから』と言ってもらえるから。自分がやりたいことを、いちいち許可取ってたら、誰かの許可がなかったら動けない人生になるよ。お前、『お金持ちになっていいですか?』っていちいち許可取らないだろ。勝手にお金持ちになれよ」

■しかし、、その状況でさえ、勉強以外の何かを優先させたのは自分自身。”できなかった”という世界観を極限まで排除し、”やらなかった”という言葉を選ぶと、自らの言葉と人生により責任を持つようになる。

■「そんな小さなことで人生が変わるのか?」と思う方もいるだろうが、こんな小さなことの積み重ねでしか、人生は変えることができない。何度も言うが、一回や二回変えたくらいでは何も変わらない。連続する思考の中で、無意識に使われている言葉によって、あなたの世界は形づくられ、その中を生きている。だからこそ、自分の言葉に細心の注意を払い、それを変えることによって世界の認識を変えていく。

■まずは自分の言葉をよく観察し、どのような言葉でこの世界を生きているのかを知ること。そして、もし自分が効果的な言葉を扱っていないのであれば、それらを封印し、新たな言葉で書き換えていく。それはいずれ、強力な言葉の習慣となり、思考そのものを変え、行動を変え、成果を変えていく。

第6章(相手を勝たせる)

■それは、「人を幸福にしようとしている人は、幸福である」というものだ。他者に対して、何かの貢献をしよう、良い影響を与えようとしている人は、総じて幸福度のレベルが高いことが分かった。他者に貢献することによって幸福を感じることは、ここでも証明される形となった。

■手っ取り早く始めるには、「すみません」と言いそうになったら無理矢理でも「ありがとう」と言い換えることだ。

■”How are you?(調子はどう?)”と聞いただけで、”Thank you for asking(聞いてくれてありがとう)”である。これだけで妙に気分が良い。私はこの表現が大好きになった。何かにつけて”Thank you for asking”を使うようになり、ついには日本語でも「おっ、聞いてくれてありがとう!」と言うようになった。

■本当に優秀な人ほど、負けたフリができる。試合に負けて、勝負に勝つ駆け引きの重要さを理解し、この場では負けたふりをして、いや、正確に表現すると相手を勝たせ、場を働かせることで結果として目的を達成する。

第7章(自分を働かせる)

■ギターの練習は、一日に100回やろうと思えばやれるが、「ありがとう」の練習を一日に100回やるのは至難の業だ。100回分のコミュニケーションを発生させなければならないからだ。人が動作を完全に身につけるには、3000回の反復が必要と言われている。一日に10回、意図的に「ありがとう」を言えたとして、10ヶ月かかる。実際に、一日10回やると考えると、ものすごい量だということに気づく。

■「ありがとう」の習得においても、無論「下手」な時期を通過する。その時には、相手から笑われることもあるかもしれない。しかしその時期を通過しなければ、熟練者にはなれない。むしろ、相手から「最近どうしたの?なんか、すごく不自然だね」と言われる方が正解だ。

■稀に、ごく稀に、熱を同じレベルで保ち続けられる人がいる。私はそう言う人こそ、超人と呼ぶようにしている。人の感情は、どんな状態になったとしても時間の経過とともに元に戻る。嬉しい、楽しい、大好きといった感情も、悔しい、辛い、悲しいといった感情も、それがどれだけ強い感情だったとしても、いずれほぼ確実に元に戻る。

■ひとつ目は、感情を強制力に変換すること。感情が熱いうちに約束に変えると、それが強制力となって行動が継続される。何かをやろうという衝動が沸き起こったまさにその瞬間に、未来の自分の行動を決めてしまおう。

■自分の行動を変えようと思っても、そう簡単には変わらない。なぜなら、これまでのあなたをつくってきた一日3万5000回の意思決定と、それに伴う行動の歴史は、昨日今日で思いついた新しい行動では塗替えられないからだ。気がつけば、巨大な引力に飲み込まれ、新しいことをやりたいという感情も、行動も、習慣もなくなっていく。だからこそ、自分の力ではなく、強制力、構造、他人の力で自分を動かしていけば、新しい習慣、すなわち新しい人生はおのずと手に入っていくだろう。

■成果は、簡単には出ない。しかし、続ければ確実に出る。それは、分かりやすい成果としてではなく、振り返った時に「確かに、以前の自分とは明らかに違う」といった具合に、ジワリと出る。分かりやすい成果を求めるのではなく、行動そのものに没頭し続けられるかどうかが、最終的に大きな成果を手にできるかどうかの鍵を握っている。

第8章(自分の「在り方」を決める)

■私自身の経験も含めて言えることがある。どれだけ頑張っても結果が出ないとしたら、あなたがそれを望んでいるからに他ならない。結果が出ない方の未来を、自らが望んで選び取っているのだ。なぜなら、その方が自分にとって利益が大きいからだ。

第9章(自分の「状態」を高める)

■それは、いま、この瞬間の五感に集中することだ。五感とは、言うまでもなく視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことである。いまこの瞬間に自分の五感を通して感じているものは、最も真実に近いものかもしれない。多くの場合、ほぼ同時に思考が稼働し、いま得たばかりのその情報に何かの解釈を付け加える。繰り返すが、あなたの思考がつけた解釈の世界は、あなた自身ではなく、後天的に獲得した誰かの解釈の世界である。あなた自身が、いま、五感を通して感じている何かは、最もあなた自身に近い。

コメント

こう言うと何だが、とても元プロ野球選手が書いた本とは思えない内容。

一般的なプロ野球選手像を想定したうえで変なバイアスが掛かっていることがそもそも問題なのであるが。。。

最近のスポーツ選手はどの分野でも言語化能力が高く、インタビューなどの受け答えも理路整然としている人が多い印象はあるが、それでも高森勇旗氏ほど言語化できる人は稀有なように思う。(こちらもそもそもスポーツ選手に限る必要もないが)

内容としては非常に実践的。根底にある「行動しないと何も変わらない」という考えのもと、とにかく行動することができるようになるステップが書かれている。

「結果を出したければ『俺は、こんなもんなのかもしれない』と、諦める」ことが第一歩というのは耳が痛い。

自分自身こんなものではない、という思いにすがりたくなるのは、そこに常に可能性を見出しておきたいがゆえ。

まったく自分自身に可能性がないと諦めることは、いわば自分自身を否定することであり、それはこれまでの自分の人生を否定することにつながる。

だからこそ誰もがそれを避け「自分はこんなもんじゃない」という考えに固執するのだろう。そうすれば自分の人生を否定せずにすむ。

逆にいえば大半の人がこれができないから成功できないと言える。もちろん自分自身もだが。

こうして自分自身に対して「戦力外通告」を出してはじめて、これまでとは異なる方法を受け入れる素地ができるわけであり、まずはそこからスタートしないと始まらない。

自分も結果を出すということから逃げているのは自覚しているが、なかなかここを打ち破ることができずにいる。

英語についてもTOEIC L&R Testをいくら受けたとしても英語ができるようにならないとはわかりつつも、そのぬるま湯に浸かりたいがために受験していたというのが正直なところ。

いまいま成功していなければ現状の延長に成功がないことは自明であるのだが・・・。

結果を出すという視点の重要性と、そこから逆算して行動していくことの大事さを再認識した。

ただ、一足飛びに状況が変わることはない。

「こんな小さなことの積み重ねでしか、人生は変えることができない」という言葉がすべてだ。

まずは日頃使う言葉から変えてみる。その小さな積み重ねで徐々に変わっていく。

このあたりの言葉の使い方などは神田昌典氏の書籍にもあるので、成功者にとっては必要不可欠なものということだろう。

変化するというと0から100に一気にトランスフォームすることを思い浮かべがちだが、当然だがそんな風に一気に変わることはない。

変化は徐々に少しずつしか起きない。これも重要な示唆のように思う。

本書にはそのためのステップが細かく書かれており、すぐに取り組めるという点で極めて実践的であり実用的な書籍といえる。

あとは自分自身がこのマインドセットを導入し、仕組みの導入など含め取り掛かれるかどうか。

オススメできる一冊。

一言学び

結果を出せないのは、自身が「俺も頑張れば、できる」という幻想の中にいるからだ。

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