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読書レビュー:『ビジョンとともに働くということ』(山口周/中川淳)

自分が読んだなかだと『ビジョナリーカンパニーZERO』がビジョンに関する書籍であり、様々な事例が紹介されていてとても参考になった。 本書は『ビジョナリーカンパニーZERO』のさらに前段階である、そもそもビジョンを持つことがより重要になってきた背景から説明されているので一層腹落ちしやすい。 また日本の文化的な背景などからも説明されていることも読者にとってはよりわかりやすく感じられる。 ビジョンを持つことの意味や有用性について知りたい人には当然オススメできるし、また現代社会における働くことの意義など、少し抽象度の高めの問題意識を持っている人にもヒントになることが多いはず。
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読書レビュー:『バカロレアの哲学』(坂本尚志)

そのプロセスのなかでも反対・否定の意見を尊重することが重視されている。それはそういった反対意見の妥当性・論理性のそんちょうが、民主主義社会において必要な態度であるからであり、この点がアメリカ式のエッセイの型と異なるという指摘には目を開かれた。 確かに反対意見を必ず入れるという形になっていれば、自然と自分とは逆の立場の意見についても考えるようになるはずだし、それこそが民主主義国家における市民のあり方として健全なものなのだろう。 そう考えるとこういったバカロレアの哲学試験で意図的に反対意見を尊重するような行為態度を涵養するように仕組み化しているのはさすがフランスといったところか。 フランスの高校生がバカロレアの哲学試験でどうやって問題を解いているのか、その一連のプロセスを本書では例題を通じて知ることができる。 バカロレアに興味のある人はもちろん、哲学に興味のある方も哲学を主題にしてどういった試験が実施されているのかを知る意味でも本書は役に立つはず。
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読書レビュー:『戦時下の外交官』(佐藤優)

本書のなかでも当時の大島駐独大使が「大使は本省の訓令に従って動いているだけである。従って政策の遂行に対して責任はない」と語ったというエピソードが記載されている。 誤りを認めずに、自己保身に走る。どの時代にもそういった類の人物はいるし、自分自身もそうなってしまう可能性を常にはらんでいる。 こういった個々の事例を知りストックしておくことで、日頃の行動を律するようにできるかもしれないし、緊急時にも後ろ指を指されない行動を取れるかもしれない。 もちろんその時になってみないとわからないが・・・。 結局は後世の人が歴史・過去を評価する際に後ろめたさのない言動をいかにできるかに掛かっているように感じる。わたしのような小市民ではここまで意識する必要ないかもしれないが。 戦争という極限状況における人間模様・状況を学ぶためにも、また当時の外交官の世界を垣間見るためにも本書は有益に思う。 ページ数が多いので少し分厚く、取っ掛かりづらく感じるかもしれないが。。。
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読書レビュー:『保守主義とは何か』(宇野重規)

守るべきものがなくなったとき、保守主義という思想自体のレゾンデートルはなくなるように思うのだが、そうなったときはそうなったときでまた何かしら守るべき考え方が出てくるのかもしれない。 それにしても保守主義を考える文脈において、英米の特殊性は考慮すべきという点は合点がいった。アメリカについてはよく言われるようにヨーロッパの伝統がなく、また啓蒙主義の挫折がなかったことから生じるロマン主義への移行も起きなかったなど、その特殊性が説明される。 しかし、英国が名誉革命によって確立した国制が墨守するべきものとしてあった点で、他のヨーロッパ諸国と異なるというのは、今回の発見だったように思う。(市民革命が生じた時期が英国が早かったのがポイントなのだろうか・・・) 保守主義の歴史的な流れや各国における違いを章ごとに丁寧に述べられており、非常に読みやすい一冊だった。頭の良い人の書いている文章といった印象。 保守主義に興味のある人や、またアメリカ政治における思想的な変遷に興味がある人にも特に有益になるはず。
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読書レビュー:『大日本史』(山内昌之/佐藤優)

世界史を学ぶ場合には日本史は大きくは近現代以降にしか登場しないし、日本史を学ぶ場合であっても日本と世界の関わりについてはそこまで主眼が置かれていないように、少なくとも私が学生のときは感じた。 そういった状況を脱し、世界史における世界から日本への影響や、逆に日本史における日本から世界への影響、といった視点から本書は日本の歴史を振り返っている。 しかしながら、歴史の知識をある程度体系的に暗記しておくことの重要さは大人になるほど身にしみる。 中学生や高校生のときに歴史の流れや最低限の知識を丸暗記して頭に入れておくことは、その後の大学生活や社会人になっても極めて有用であるように思う。 最近は丸暗記はナンセンスで必要なときに調べれば問題ないという風潮が強いが、結局頭に知識がないと読解力も落ちるし、そもそも学ぶスピードが段違いに遅くなる。 そういう意味では、如何に義務教育や高校生のときに基礎的な知識を叩き込めるか、というのは死活的に重要になってくると思うのだが、如何せんこの考えは前時代的過ぎる感は否めない。 もはや学生ではない自分にとっては今さらではあるが、最低限の歴史知識は入れていかないと。 大学受験用の日本史・世界史を勉強を通じて知識強化を図ろうか。。。
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読書レビュー:『子どもに語る前に 大人のための「性教育」』(宮台真司/岡崎勝)

読みたいと思ったきっかけ こちらも『経営リーダーのための社会システム論』と同じ理由で、宮台真司氏の名前で検索したときに新刊として出てきたので購入した。 /おそい・はやい・ひくい・たかい 112 / 岡崎勝/編著 宮...
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読書レビュー:『経営リーダーのための社会システム論』(宮台真司/野田智義)

前述のとおり講義録であるため非常に読みやすい。宮台真司氏の著作を読んだことがない人でもとっつきやすく、そのうえ氏のあらかたの思考の方向性や考え方を学ぶことができるので、宮台真司氏入門として非常にオススメできる。 また個人や家族、社会や共同体の再建(そもそも再建する必要があるかも含めて)に興味がある人にも薦められる。 SFの世界のような話がテクノロジーの進展によって本当に現実のものになっているということを知るためにも本書は最適だと感じる。 本書の英語版も出版することが計画されているようなので、英語版が出たらそれも買って勉強してみたいところ。
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読書レビュー:『完全読解 司馬遼太郎『坂の上の雲』』(佐藤優/片山杜秀)

自分は『坂の上の雲』を読んでのは高校1年生のときだったので、もう読んでから15年くらい経っている。 当時は読書にも不慣れで、語彙力も不足していたので、国語辞典で言葉の意味を調べながら読書していたのが懐かしい。 振り返って考えてみると、あのときに国語辞典を引きながら読書したことが意外と今の自分の語彙力の土台になったような。 初めて長編の作品を読んだので、読み終わったときの達成感がとても爽快に感じられたことを覚えている。 文庫本で8巻あるので簡単に読めるものでもないが、もう一度読み直してみても面白いかもしれない。 佐藤優氏が本書のなかで言うように、自分も歳をとったのでまた違った印象や感想を抱けるかもしれない。 そのときに本書の附録は役立つこと間違いない。「『坂の上の雲』をこれから初めて読む」という人にとっては本書を副読本としてセットで読む方が理解しやすく、また史実と異なる部分についても把握できるので、是非手元に置いておくことを薦めたい。
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読書レビュー:『英語の議論を極める本』(植田一三 他)

各トピックがそれぞれ簡単に答えが出ないものが故に、読みながらそれぞれのメリット・デメリットを整理できるのも嬉しいところ。 議論が点数化されるStep4については、わたしは正直あまりピンとこない部分もあったので、読み飛ばしながら進めてしまったが、どういった形で話し、回答し、質問すれば議論で勝てるのかの術もちゃんと読めば学ぶことができるだろう。 といってもやはりメインは各トピックがどんな状況で、どういったメリット・デメリットがあるかを英語で学べるところにこの本の真価があると思うので、そこに興味のある人には是非読むことを薦めたい。 各トピック10ページ強で簡潔に書かれており、少しずつ読むのにも適しているので、そこまでハードルも高くないはず。
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読書レビュー:『21世紀の教育』(ダニエル・ゴールマン/ピーター・センゲ)

といっても監訳者まえがきや巻末付録などでトリプルフォーカスとは何か、Social Emotional Learning (SEL)とは何であるかといった説明もあるので、全くまとまりがないわけではないのだが。。。 個人的には、最初に巻末付録を読んでから本文を読んだ方が理解が進むように思うので、そういった順序で読むことを進める。 一方通行の授業や教科書の暗記などといった古い教育のイメージが変わりつつあることは薄っすら知ってはいたが、こういった自分の状態に関するメタ認知や、他者の気持ちへの理解、開かれた世界への向き合い方について教育していく方法が確立されている(されつつある)ことに驚いた。 自分の子どもが小学生になる頃にはこういったSEL教育やシステム思考教育が日本の津々浦々で普及しているのだろうか・・・。
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