読みたいと思ったきっかけ
書店で見かけたのがきっかけ。
人事異動の季節になり、世間の大きな会社はどういった人事異動がなされているのか興味が出て購入した。
内容
目次
目次は以下のとおりとなっている。
まえがき | : | 御社の人事はブラックボックス? |
1章 | : | 御社の異動はどのタイプ? ー 若手社員の配属・育成のヒミツ |
2章 | : | 御社の人事部は何してる? ー 人事権のヒミツ |
3章 | : | 人事のからくり① 目配りされないミドルパフォーマー |
4章 | : | 人事のからくり② 管理職になれる人、なれない人、なりたくない人 |
5章 | : | 人事のからくり③ 将来の役員候補 ハイポテンシャル人材の世界 |
6章 | : | 人事のからくり④ キャリア形成の鍵・タレントマネジメント入門 |
7章 | : | 人事ガチャに戸惑うあなたに贈るQ&A |
8章 | : | これでよいのか? ニッポンの人事異動 |
あとがきに代えて |
内容
わたしの気になった箇所について記載する。
1章(御社の異動はどのタイプ? ー 若手社員の配属・育成のヒミツ)
・総合職という名前から想起されるように、ジェネラリストを目指してほしいと期待する会社もありますが、それは少数です。総合職といえども実際は、まず何らかの専門分野のプロになることを期待して異動配置運用する会社がほとんどなのです。
2章(御社の人事部は何してる? ー 人事権のヒミツ)
・直属上司が考える異動配置を単純に言うと、自部署にミスマッチだと思われる人は出したい、自分が知っている範囲の人で優秀そうな人には来てほしいということです。それ以外はあまり異動対象者として意識されることは少ないはずです。もし、あなたの上司が自部署の短期業績だけでなく、部下の中長期的なキャリアにも関心を持って、その実現に向けて親身になって支援してくれる人であれば非常に幸運です。が、もちろん逆も真なり。その意味で、誰が上司か、これはやはり「上司ガチャ」と言えなくもありません。
・つまり、随時異動型の会社は、事業環境変化に迅速に対応すること(アジリティ)を重視する会社だということなのです。定期異動型には人事部の人事権が強い会社が多く、随時異動型には各部門の人事権が強い会社が多い理由です。製造業には比較的、随時異動型が多いのも人事権との関係でしょう。
3章(人事のからくり① 目配りされないミドルパフォーマー)
・同じ部署に5年以上在籍すると、成長志向、学習意欲、キャリアへの関心は低下してきます。他部門の業務内容などに関する社内知識が豊富になっていくというわけでもありません。いわゆるマンネリ傾向だと言えそうです。この「5年」という期間は皆さんの実感とも合致するのではないでしょうか。
・皆さんは、「今の部署で今の仕事をずっと続けていて、40代半ば以降もこの仕事のプロフェッショナルとして通用するのか?」を問い続ける必要があります。30代半ば〜40代前半の10年間をプレーヤーとして頼りにされていることで安心し、キャリアを考えることなく同じ場所で同じことをやり続けるリスクを決して侮ってはいけません。
・30代半ば〜40代前半の過ごし方については、技術系の人よりも事務系の人のほうがリスクが大きいと言えそうです。技術系の仕事をしていると、常に何らかの技術進歩の影響を避けられませんから、折に触れ「自分はこの先の技術進歩についていけるだろうか?」という自問自答を繰り返さざるを得ません。自ずとキャッチアップのための勉強をするなり、場合によっては方向転換するなりの機会があります。一方の事務系、とくに営業系は目先の業績がよかったりすると、立ち止まって考えることなしに、勢いのまま同じことを繰り返して10年間を過ごしたりします。そして気付いた時にはあっという間に40代半ばで、専門能力と言えるほどのものを持っていないという事態に陥りがちになるわけです。
・絶対とは言いませんが、専任職になることはビジネスキャリアとしてはあまりハッピーではないかもしれません。専任職よりは専門職のほうがよさそうです。30代半ば〜40代前半の過ごし方で、専門職になるか専任職になるかがほぼ決まってしまいます。
・ジョブ型は「キャリア自律」とセットで語られることが多い言葉でもあります。キャリア自律とは、自分のキャリアは自分で考えて切り拓くということです。当たり前のことのようですが、かつての大企業においては必ずしも自分でキャリアを考える必要はなく、会社の人事異動命令に従っていればキャリアアップできた時代もありました。会社の側にも「とことん社員の面倒を見ていこう」という人事方針がありました。キャリア自律は耳障りよく響きますが、厳しい言葉です。要するに、「会社ができることには限度があるので、社員それぞれ自分で頑張ってほしい」という意味なのです。
4章(人事のからくり② 管理職になれる人、なれない人、なりたくない人)
・もし、「管理職になること」そのものが目的・目標であるとしたら、実績を挙げるべく頑張る、能力開発に努めるという正攻法に加えて、登用機会が多い職場への異動や転職を視野に入れるという考え方もありえます。ただし、その前に、自分にとって「管理職になること」そのものが最優先事項なのかどうか、それをもう一度じっくり考えたほうがいいかもしれません。おそらく、長期的なキャリアの観点では、管理職であることよりもしっかりとした専門性を持っていることのほうが重要です。
5章(人事のからくり③ 将来の役員候補 ハイポテンシャル人材の世界)
・おそらく今後は、さまざまな領域のプロフェッショナルが尊重され、経営人材もそのひとつだという認識が広がってくるはずです。そうすると、経営人材への意志と適性がある人材を早期に発掘して育成するという考え方が当たり前になり、その取り組みもヒミツ中の秘密というほどではなくなってくるでしょう。もし皆さんがお勤めの会社で、すでに次世代経営人材発掘・育成の枠組みが社内にアナウンスされているのなら、考え方が進んでいる会社だと言えそうです。
・今日では、経営職は「経営の専門職」であって、「知らず知らずのうちに経営職になっていた」というものではなく、「意志と適性がある者に専門的トレーニングを施して育成する」という考え方です。やはり、人材プールに入れる際には経営職に向けての本人の意思を確認する方向になっていくでしょう。
6章(人事のからくり④ キャリア形成の鍵・タレントマネジメント入門)
・皆さん、今一度あなた自身のキャリアのあり方を考えてみましょう。ステレオタイプに管理職を目指さなくてはならない、昇進昇格できなければ敗北だなどと考える必要はありません。キャリアのあり方に唯一絶対の正解があるわけではないのです。あなた自身が、どう考え、何を望んでいるか次第です。その答えは、あなたの中にあります。むしろ、あなたの中にしかないと言うべきかもしれません。
7章(人事ガチャに戸惑うあなたに贈るQ&A)
・人材育成に熱心な会社かどうかを知るには、説明会や面接で異動配置方針を尋ねてみましょう。ここまで本書で解説してきた内容をふまえれば、読者の皆さんは会社の人材育成スタンスが自分に合うかどうかを判断できるはずです。また、テレワークの状況も聞いてみるべきです。とくに入社3年目くらいまでについては、テレワーク下でのOJTは限界があるように思います。
・先輩と後輩との能力差は、たいてい次のようなものです。2年生は1年生より仕事ができる。3年生は2年生より仕事ができる。しかし、5年生は3年生より仕事ができるかというと、必ずしもそうとは限らない。そして10年生と5年生との比較では、もう経験年数は当てになりません。
・育成や昇進昇格を転勤に結びつけている会社では、転勤を断ることによる機会損失がないとは言えません。
・むしろ近頃では、グループ会社への出向を、次世代経営人材の育成策として位置付けていることが珍しくありません。若年層のHIPO人材に積極的に出向を経験させる会社もあります。親会社にいるよりも、若いうちに責任権限が大きい仕事を経験できたりするからです。育成のためにあえて難易度が高い仕事にチャレンジさせることをストレッチアサインメントとかタフアサインメントと言います。
・ちなみに出向先は必ずしも資本関係があるグループ会社とは限りません。人材育成を目的として、まったく異なる業種の会社との交換留学的な出向を行っている会社もあります。いずれにしても、出向をキャリア開発の機会として活用する時代です。
・もし、これまでずっと同じ部署で働いていたとしたら、少なくとも3年に一度くらい、すなわち、10年目なら新入社員の時から3段階ほどグッとレベルが上がったという成長実感があるでしょうか?そうであれば、これまでのところはまずまずです。しかし、成長実感が1段階や2段階くらいだという場合は、少々問題かもしれません。また、3段階の成長実感がある場合でも、今後も同じように成長実感を得られそうかどうかを客観的に検討してみる必要がありそうです。
・自分のキャリアの幅を広げること、積み上げることに役立ちそうなことは、何であれ積極的に活用することをお勧めします。とくに社内公募やフリーエージェント制度への応募は、ほぼノーリスクです。使わない手はありません。
・責任権限の明確化や意思決定の迅速化を目的に、組織数や組織階層はできる限りスリム化するというのが基本的な流れです。同様の理由で、副部長や部長代理などの中間役職を置く会社も少なくなっています。成長企業はポストが増えるでしょうが、全体傾向としては、ポストがどんどん増えていくという状況ではなさそうです。
8章(これでよいのか? ニッポンの人事異動)
・戦略人事を実現するためには、少なくともキャリアとスキルに関する情報を充実させて、「OLD 3K(記憶、経験、勘)」から「NEW 3K(記録、傾向、客観性)」によるデータドリブン人事へと進化させていく必要があります。
・標準より優れた人であっても「一般社員20年、課長20年、ポストオフ後5年」というのが、会社員人生のリアルです。
・たとえば、20年近く連続して管理職を務め、マネジメント業務にほとんどすべての時間を費やしてきた人が、その後にスペシャリストとして通用するかと言えば、そう簡単ではないかもしれません。現在、会社がシニアの職域開発で悩んでいるという場合のシニアの多くは、長らく管理職を務めてきた人たちのことなのですから。その人たちも、スペシャリストとしてのインプットを適切に持つことができていれば、ポストオフしたからと言って慌てて職域開発を、などという必要はないはずです。
コメント
自分自身は大企業に勤めているわけではないので、この書籍に出てくる事例に当てはまるわけではないのだが、一般論として大企業の人事異動がどのように決まっているかを垣間見ることができた。
自分自身も30代も半ばに近づいていることから、「30代半ば〜40代前半の10年間をプレーヤーとして頼りにされていることで安心し、キャリアを考えることなく同じ場所で同じことをやり続けるリスクを決して侮ってはいけません」という指摘は肝に銘じねばと思った。
また「ステレオタイプに管理職を目指さなくてはならない、昇進昇格できなければ敗北だなどと考える必要は」ないというのもまだ主流の考えになってきてはいないが、徐々に浸透してきている考えのように思う。
自分自身がどういったキャリアを歩むのか。
先日読んだ『ゆるい職場』での指摘のとおり「会社を使って自分を育てる」という意識が必要になってくるのだろう。
世間一般でどれくらいのレベル感の役職まで昇れるのだろうと思っていたが、「標準より優れた人であっても『一般社員20年、課長20年、ポストオフ後5年』というのが、会社員人生のリアル」というのを見て、ひとまずそれくらいの未来像を想定しておけばいいとわかったのは収穫だった。
それにしてもシニアになってからも働くという視点を今のうちから持って動いておかねばいけないのことを考えると、昔に比べて大変になってきていると言えそう。
人生100年時代とか言っているので、自分の専門性を確立していないと人生後半が悲惨な状態になり得ることが示唆されているように思う。
こう考えてくると「そうならないためにも手に職をつけ、専門性を磨かないといけない」という世間の潮流ど真ん中の主張に落ち着いてしまう・・・。これは不可避な傾向なのかもしれない。
まずは日々の仕事のなかで自分ができる範囲で専門性を磨く意識を持ち、仕事に臨んでいくしかない。
何も考えずに働いているだけでは後々苦労することになると自分を叱咤激励しながら頑張るしかない。
一言学び
一般社員20年、課長20年、ポストオフ後5年
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