読書レビュー:『21世紀の教育』(ダニエル・ゴールマン/ピーター・センゲ)

読書

読みたいと思ったきっかけ

ふらっと本屋に行ったときに気になったので購入。

また土井英司氏のビジネスブックマラソンでも紹介されていたのも購入したきっかけになっている。


内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

監訳者まえがき 答えのない世界を生きる子どもたちのために
はじめに    
PART 1 より良い人生のための教育
PART 2 私たち自身にフォーカスする
PART 3 他者にフォーカスする
PART 4 世界を理解するーシステム思考
PART 5 SELとシステム思考のトリプルフォーカス
巻末付録 世界と日本で進むSEL教育入門

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

監訳者まえがき(答えのない世界を生きる子どもたちのために)

・原書となる『トリプルフォーカス』という小冊子は、以前からの友人である2人の会話から始まった。

PART 1(より良い人生のための教育)
自分に気づく力自分は何を感じているか、なぜそう感じているかを理解する能力。
セルフ・マネジメント感じていることに適切に対処する能力。
他者を理解する力他者が何を考え、何を感じているかを理解し、他者からの視点を把握する能力
ソーシャルスキル上の3つを統合して、調和の取れた関係性を築く能力。
より良い意思決定上のすべての感情的知性に関するスキルセットを総動員して、人生におけるより良い意思決定をする能力。
PART 2(私たち自身にフォーカスする)

・自分が何を感じ、なぜそう感じるのかは、大人にとっては自明のことのように思えるかもしれないが、自分の内面を認識する基本的な能力は、子ども時代に習得しなくてはならない。

・解剖学的には、脳は身体の中でいちばん最後に成熟する器官であり、20代半ばぐらいまで最終的な形にならない。

・脳の学習に関わる中枢は、私たちが何かに集中し落ち着いているときに最高に機能する。逆に、私たちが動揺しているとき、これらの中枢は十分に機能をなくなってしまう。

・認知制御の能力とは、ある意味、どう上手に向けるか、ということでもある。注意を向ける力は高めることも、養うこともできるメンタルスキルだ。

PART 3(他者にフォーカスする)

・一般に学びというのは、あたたかく、支えられていると感じる環境にあるとき、いちばん効果的だ。

・人は安全基地を持っているとき、その人の思考は最高の状態で働き、その人の力は最もよいかたちで発揮される…対照的に、不安を感じるほど、人はより自己中心的になる。周りの人にも、自分を取り巻くシステムにも無関心になり、自分のことだけを考えるようになる。

・私たちが直面しているシステムの問題で、おそらく最大のものは「人新生ジレンマ」だろう。地質学者たちでは現代を「人新生時代」と読んでいる。歴史上初めて、種の一つにすぎない人間の活動が、いまや全地球システムを動かす機能の重要な一部になったことをふまえた名称だ。

PART 4(世界を理解するーシステム思考)

・システムシンカーは、①原因と結果の関係を探求するときは「時間的な遅れ」のインパクトを認識する。②意図していなかった結果が、どこに現れるかを見つける。

・すべての知性と同じように、システムに対する知性も育てなければ退化する。ほとんどの子どもたちが、伝統的な学校教育に染まっていくほど、生まれつきのシステムに対する知性が見えにくくなっていくのは不思議ではない。

・システム思考家の13の習慣

1全体像の理解に努める
2視点を変えて理解を深める
3メンタルモデルが現状および未来に与える影響を考える
4システムの構造を理解してレバレッジの大きい介入策を見極める
5システム内の要素の経時的変化と、それが生むパターンや傾向を観察する
6複雑な因果関係の中にある循環的性質を突き止める
7問題をじっくり考え、結論を急がない
8システムの構造がシステムの動きを生み出すことを認識する
9行動の結果を短期・長期の両面から予期しない結果も含めて考える
10前提を明らかにして検証する
11意図しない結果が現れる場所を見つける
12結果を検証し、必要なら行動を変える
13時間的遅れの影響を認識して因果関係を探求する

・究極的に、いま問われているのは、私たち人間の集合的な自己効力感、すなわち、社会としても種としても、直面している困難な問題に向き合う能力だろう。

PART 5(SELとシステム思考のトリプルフォーカス)

・私たちは何事も、思考と行動を往復しながら学んできたのだ。理論と実践の分断があることによって、エレガントで扱いやすい「理論」が語られるのに比べて、「実施」はやっかいで避けておきたいものと扱われる傾向にある。ーこれは、有名な米国陸軍元帥だったダグラス・マッカーサーが「素人は戦略を語り、プロフェッショナルは兵站を語る」と言って示した見解に近いかもしれない。

・社会変化に関する研究から、全体の10〜20%が新しいアプローチを真剣に実践し、その効果を示すことができれば、クリティカルマス(急激な普及に転じる分岐点)に達することが知られている。

・私たちが忘れていけないのは、人類の歴史で初めて、いまの子どもたちは「世界」の中で大人になっていくということだ。7歳や8歳になる頃には、子どもはこの世界にある、より大きな環境や社会の問題に気づき始める。

巻末付録(世界と日本で進むSEL教育入門)

・ストレスマネジメントや自己管理の領域においても、「普通は〜しなければならない」「こうなるはずだ」といったジャッジをやめることで、本心に気づくことができます。

コメント

「原書となる『トリプルフォーカス』という小冊子は、以前からの友人である2人の会話から始まった」とあるとおり、原書が小冊子だったこともあって本自体はとても分量も少ない。

小冊子の内容だけでは単行本として出版できない分量だったからこそ、監訳者まえがきや巻末付録を付けたのだと邪推してしまった・・・。

自分の読解力が不足しているのか、全体の概略を把握するのが難しく感じられた。各章や各節で学ぶべきことが多くあったと感じられるのだが、読んだ後に「結局なんだったんだっけ?」という状態になってしまった。

これに関しては自分の読書の姿勢や読み方が悪い部分があるのだが、全体としてのまとまり感がなかったように個人的には感じた。

といっても監訳者まえがきや巻末付録などでトリプルフォーカスとは何か、Social Emotional Learning (SEL)とは何であるかといった説明もあるので、全くまとまりがないわけではないのだが。。。

個人的には、最初に巻末付録を読んでから本文を読んだ方が理解が進むように思うので、そういった順序で読むことを進める。

一方通行の授業や教科書の暗記などといった古い教育のイメージが変わりつつあることは薄っすら知ってはいたが、こういった自分の状態に関するメタ認知や、他者の気持ちへの理解、開かれた世界への向き合い方について教育していく方法が確立されている(されつつある)ことに驚いた。

自分の子どもが小学生になる頃にはこういったSEL教育やシステム思考教育が日本の津々浦々で普及しているのだろうか・・・。

一言学び

不安を感じるほど、人はより自己中心的になる。


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