読書レビュー:『高学歴親という病』(成田奈緒子)

読書

読みたいと思ったきっかけ

書店で見かけたのがきっかけ。

自分は高学歴親ではないと思うが、世間一般では高学歴親がどういった振る舞いをしてしまうのか、その実態を把握しておきたくなり購入した。

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高学歴親という病 (講談社+α新書) [ 成田 奈緒子 ]
価格:990円(税込、送料無料) (2023/3/1時点)


内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

まえがき    
第1章 「高学歴親」の子育てリスク
第2章 心配しすぎの高学歴親
第3章 傷つきやすい高学歴親子
第4章 高学歴親は「間違った早期教育」に走る
第5章 高学歴親のための「子育てメソッド」
あとがき    

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

まえがき

・自分が育てられたようにしか育てられない、というのは、一面の真実ではあります。他者からのアドバイスを受けなければ、そうなってしまうのも仕方のないことです。

第1章(「高学歴親」の子育てリスク)

・ところが、多くの親は子どもを自由に泳がせることができない。自ら考える力、課題解決能力や主体性を、実はわが子に植え付けていないどころか奪っているのではないか。そんな疑問を持ち続けてきた私はこの後、親たちが内面に抱える問題を突き止めるのです。

・私やアクシス(評者注:著者が代表を務める組織)を頼ってくれるお母さんたちも、掘っていくと本音が出てきます。そこで少しずつ話を聞いていくのですが、お父さんの存在がなかなか見えません。もしくは、お父さんと子育てにおける意見が一致しません。お父さんの存在が非常に微妙なのがひとつの特徴です。

・このように高学歴親が溺愛してしまう要素のひとつに、高齢出産があります。大学や大学院を卒業してキャリアを築いた親たちは晩婚傾向にあります。他の友人が先に結婚して優秀な子どもを育てていると、とても幸せそうでキラキラ輝いて見えます。成功例があると、後発組としてはある意味辛い。後から来て、このまま自分が何もしなければダメな子になると焦ります。溺愛は本人の意図しないところで、リスクのある子育ての出発点になるのです。

・ほかにも、自分は親にスパルタで育てられたが、その教育のおかげでここまで来たという「生存者バイアス」がありました。サバイブ(生存)した、つまり何らかの苦しみを乗り越えた自身の感覚のみ基準として判断してしまうのです。サバイブできなかった側の気持ちを考えられないため、娘にも厳しく接していました。その点は、高学歴で優秀な父親に見られる特徴のひとつでしょう。

第2章(心配しすぎの高学歴親)

・完璧主義な高学歴親は、私の肌感ではシャープで傷つきやすい人が多いです。感受性が強く、不安も察知しやすい。このため、あらかじめネガティブなことを回避するために、目の前のことに一所懸命に取り組みます。強い溺愛もある。そんな姿が、子どもにとっては「心配ばかりして自分を信頼してくれない」メッセージとして伝わるのです。

・一方、お父さんになるとピアサポートはほぼ皆無です。職場はあくまで仕事場なので、子どものことなど話せる雰囲気ではないし、そもそも男性は自分のことを話すのが苦手。弱みを見せたくない方が多いので、周囲に相談できず孤独になりやすい。余計に新しい情報を得られません。干渉・矛盾・溺愛という不適切な子育てが生む「リスク」をずっと抱えたままです。

・ところで振り込め詐欺は欧米ではあまり聞かれない犯罪です。聞くところによると、この類の親ごころを刺激する詐欺は、日本、韓国、中国など東アジア特有の犯罪だそうです。

・性差に関係なく共通しているのは、問題の起きる家庭では、父親の存在がほぼ見えてこないことです。

・親から「かわいそうな子認定」された子どもは頑張れません。

・親に認められることで子どもが得るパワーは、私たちの想像よりはるかに大きいのです。この「子どものありようをあるがまま認める」という行為は、親から子への信頼がなければ実現しません。

第3章(傷つきやすい高学歴親子)

・子育てを、自分の人生に対するリベンジのようにとらえている人もいます。自分より良い学歴、良い人生をと願うあまりに干渉・矛盾・溺愛を続けます。親が子どもの人生を自分の生きがいにしてしまう。要するに依存するのです。

・リベンジ型の親は子どもに対し条件付きの愛情を注ぎがちです。子どもは自分の所有物。物(モノ)だから「いらない」と判断したら捨てていい。そんなふうに感じているかのようでした。

・お金の有り難み、つまり「お金の価値」を、親が子どもに叩き込んでいない、それをやる煩わしさを避けているからです。にもかかわらず、なぜか「これだけ子どもにお金をかけているのだから、見返りとしていい大学・いい会社に入って高収入になってほしい」と期待しています。

・月々決められたお金しか使えない。大きなものを買いたかったら貯蓄する。そんな当たり前のことを子ども時代から経験させることが大事です。

第4章(高学歴親は「間違った早期教育」に走る)

・早期教育に精を出す高学歴親の方々と、私とで一致する意見もあります。それは「子どもは可能性のかたまりだ」と考えている点です。ただし、方法論が違います。わかりやすく言うと、そういう親御さんたちは「脳を育てる順番」を完全に間違えています。この「順番」を間違わなければ、子どもの可能性を引き出せるはずなのに。

・人間が生きてゆく機能の大部分は、脳が担っています。ですから子育てイコール「脳育て」と表現していいくらいです。脳を正しく育て直せたからこそ、タケシ君は変われたのです。首がすわる前に言葉を話す子がいないように、脳の発達には段階があります。したがって、この脳育てにも守られるべき順番があります。

・このように3段階で脳は育つのですが、多くの親たちが「からだの脳」を育てずに、「おりこうさんの脳」と「こころの脳」の機能を求めています。それが、高学歴親が子育てでつまずく大きな要因です。

・私に言わせれば、「どんな子を育てたいですか」に対する答えは以下のようになります。その1「からだの脳」時代は「原始人のような子」、その2「おりこうさんの脳」時代は「学校の勉強以外の知識欲がある子」、その3「こころの脳」時代は「相手のこころを読める子」

・皆さん「子どもは8時間寝ればいい」と思っていらっしゃる方が多いようです。5歳の幼児も小学校高学年と同じように考えています。大人の睡眠は6時間か7時間くらいだから、子どもは8時間だと言うわけです。しかし、年齢によって必要な睡眠時間、そして推奨される就寝時刻も決まっています。どちらも科学的・医学的な根拠に基づいたものです。

・日が昇る朝6時前後に起きて活動を開始し、日が沈む午後7時前後に活動を終えて8時には眠りにつく、この睡眠のゴールデンタイムは、昼行性の動物である人間の子ども、原始人にとって不可欠な脳育ての基礎と言えます。

・その意味で、正しい睡眠で高度な脳をつくることは、子育てにおける最重要課題と言えるでしょう。

・「学校で習う以外の知識・情報」がたくさんある子であれば、「いいぞ、うちの子はよく育っている!」、と自信を持ってください。たとえば宇宙人でも鉄道でも、土の中の虫でもサッカー選手の名前でも、なんだっていいのです。本当に興味を持って自発的に知識を得ようとする姿が見られるなら脳育ては大成功です。親としては可能な限り、そこに寄り添って応援してあげられるとステキだと思います。

・脳育てはゼロ歳から差がつきます。でも多くの親御さんが、早くから塾や習い事に通わせ「おりこうさんの脳」を育てようとしてしまう。実はそれは、脳育ての観点では「出遅れている」ことになります。子育ての時間は限られています。おりこうさんの脳にばかり注目してしまうと、睡眠や言葉かけなど「からだの脳」をつくる時間が削られるわけです。

・ですから私たちは、5歳までは、スマホやゲーム機、パソコンはもちろん、テレビとの接触も極力避けてほしいと指導しています。特に食事中のテレビ視聴はやめましょう。強い光と音の刺激で脳が支配されてしまうため、五感を働かせて食べられません。

第5章(高学歴親のための「子育てメソッド」)

・子どもに対し「役割分担」させているのであれば脳育てにとって最高ですが、役割分担はお手伝いと同義語ではありません。家庭生活を担う家族のメンバーは、それぞれの能力に応じて、「必ずその人がやらなければならない作業の役割」を持つことを求めましょう。

・子ども側の要求をのめないことを、小さいときからロジックをもって伝えていくことで、最終的に「こころの脳」で自分で判断できる人間に育つのです。

・人を含めた生物が、その感覚器官によって主体的に知覚し、直接働きかけることのできる環境を「環世界」と言います。この環世界のオプションを広げることが、この時代の究極のテーマだと考えます。生きている魚を見る、動物を飼育する。楽器を習ってみるなど、平たく言えば血の通ったリアルなものと触れ合うことを重視しましょう。スマホだけでは力不足なのです。

・高学歴親家庭では、子育ての「軸」が勉強になっています。ところが、「必ず毎日宿題をする」を軸にしてしまうとブレやすくなります。その時々の子どもの発達において、何が大事なのか。目の前のわが子が一生幸せに暮らすための「軸」を何にするかを考えてみてください。

・まずは「早寝早起き朝ごはん」、これは絶対に譲れません。絶対軸としてあるわけです。たとえば、土・日ともサッカーの試合があって、夜になり宿題をしていないことが判明します。すると、親御さんは「今日は寝る時間を遅らせても宿題を終わらせなさい」と言います。

あとがき

・では、なぜ子育てがうまくいかないかと言えば、それは相手が「子ども」という未知なるものであり、特に幼少期は論理より感情の動物であり、高学歴親のこれまでの成功体験がまるで通用しないからです。

コメント

いざ子どもを育てるようになってみると、確かに自分の子どもには「良い教育を受けさせて、良い学校、良い働き口を」と思ってしまう。

会社の先輩達からも、子どもは中学受験に向けて塾に通っていたり、習い事もたくさんしていたりと話を聞くし、なかには小学校受験をするという話も聞いたりする。

やっぱり親になると誰もが子どもの教育に熱心になっていく。

こういった「良かれ」と思った行動が結果的に子どもに悪影響を及ぼしているというのが、ざっくりいうと本書の内容。

それに対応するためには脳の発達段階を理解したうえで適切な行動を取りましょうというお話。

早寝早起きとか、食事をしっかり取る、外で遊ぶ、自然に触れるなど、世間一般でも推奨されており、誰もが良いと認めることが、やっぱり一番効果があるというのが面白い。

色々な子育て情報が手に入りやすく、目移りしてしまう状況だからこそ、絶対軸が必要というのも納得のいくものであり、それがシンプルでわかりやすく実効性もある。

まずは「早寝早起き朝ごはん」。何度聞いてきたかわからないこのフレーズがすべての始まりになる。

我が家の絶対軸も早速「早寝早起き朝ごはん」にしようと思う。

また、本書のなかで、問題のある家庭は父親が不在という指摘がある。

父親である自分もどうやって主体的に子どもに接していくか。ついつい仕事を言い訳に妻に子育てを任せてしまいがちになるが、父親として子どもとの触れ合いを積極的に行っていかねば、という思いを強くした。

文章もわかりやすく、読みやすいので2時間くらいあれば読み終えることができるので、子育て中の方は一度目を通すと学びが多いと思う。

一言学び

まずは「早寝早起き朝ごはん」、これは絶対に譲れません

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