読書レビュー:『Deep Skill ディープ・スキル 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」』(石川明)

読書

読みたいと思ったきっかけ

土井英司氏のビジネスブックマラソンで紹介されていたのがきっかけ。

書店に行った際に立ち読みしてみて、面白そうだったのでそのまま購入した。

特に冒頭に「仕事ができる」というワードがあったのが決め手になった。(仕事ができる、ということに自分は結構興味を持っている)


内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

はじめに    
第1章 「したたか」に働く
第2章 「人間関係」を武器とする
第3章 「権力」と「組織」を動かす
第四章 「人間力」を磨く
おわりに    

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

はじめに

・「あの人は仕事ができる」という言い方があります。ビジネスパーソンであれば誰もが、そのような評価を得たいと思っているのではないでしょうか。しかし、「どういう人をもって”仕事ができる”というのか?」と聞かれると、明確に答えるのは意外と難しいものです。

・だから、私は次のように考えています。「人間心理」と「組織力学」に対する深い洞察力。そして、その洞察に基づいた的確な行動力。この2つの能力を兼ね備え、人と組織を巧みに動かす「実行力」を身につけたときに、はじめて「仕事ができる人」という評価を勝ち取ることができるのだ、と。これはビジネススクールで学べるような「理論」を超えた、「ヒューマン・スキル」とでも言うべきもの。「深い洞察」に基づいた「ヒューマン・スキル」であることから、私はこれを「Deep Skill(ディープ・スキル)」と名づけました。

・問題はそのあとです。事業提案について社内承認を取り付け、関係者や関係部署の協力を得ながら実行するプロセス。つまり、人と組織を動かす「ディープ・スキル」が求められる局面において、多くの担当者が悩み、苦しむのです。そして、「ディープ・スキル」の巧拙が、新規事業の「成否」を決すると言っても過言ではないのです。

第1章(「したたか」に働く)

・「何をどのように伝えるかが大事」などと言われることがありますが、実際のところは、相手は常に「誰が言うか」で判断します。相手に「信頼できない人間」と思われている限り、どんなに正しいことを言っても受け入れてはもらえないのです。

・「ディープ・スキル」を発揮するためには、自らがスポットライトを浴びる「俳優」になってはいけません。自らは舞台に上がらずに筋書きをコントロールする、「脚本家」のポジションを取らなければならないのです。

・こういうときに最もいけないのは、精神状態が不安定なまま何か重要な判断をしようとすることです。「9回裏ツーアウト」の絶体絶命のピンチなどと思い込んだまま、追い詰められた精神状態で拙速に何かをすると、必ず墓穴を掘ります。精神状態が歪んでいると、思考も歪んでしまうからです。

・会社で何事かを成し遂げようとすれば、さまざまな苦難が待ち構えていますが、それを「RPG」として楽しむ心の余裕があれば、きっと乗り越えていくことができます。そのためには、「会社のことで深刻になるほどのことはない」という「達観」を養うことが大切。これこそが、組織で働くメリットを最大限に享受するための「ディープ・スキル」なのです。

第2章(「人間関係」を武器とする)

・身も蓋もない話ですが、「実績」という裏付けのない人物が、どんなに立派なことを発言したとしても、組織の中では説得力をもちません。「実績」こそが、発言力の源なのです。だから、若い人はなんとしても「実績」をつくるべく、なりふりかまわずやれることは何でもやると覚悟を決める必要があります。

・「形式知」は勉強をすれば誰でも手に入るものですが、「経験知」はあなた自身の経験からしか得られない「唯一無二」のものだからです。「唯一無二」のものであるからこそ、「実績」に裏打ちされた「経験知」をもつ人には、ほかの誰にも真似のできない「独自の価値」が備わるのです。

・まず大切なのは、「ほかの人と同じことをしない」ということです。当然のことですが、周囲の人たちと「同じこと」をしていても、際立つ「特徴」をつくり出すことなどできません。

・組織の中で希少価値のあるスキルを「武器」にすることができれば、「自分の価値」を劇的に高めることができるのです。

・つまり、ビジネスにおいて何よりも大事なのは、まず「人はどんな”不”を抱えているのか?」を的確につかみ取ることにほかならないということです。「どんな人が」「どんな場面で」「どんな”不”を感じているか」に思いを馳せ、「どうすれば、その”不”を解消できるか」を考え抜く。その「不」が的を射たものであれば、必ず興味を示すユーザーは現れます。

・「お客さま=普通の人々」の気持ちや感情に共感するためには、まず、自分の「感情」がイキイキしていなければならないからです。こちらの「感情」が死んでいるのに、他者の「気持ち」や「感情」をイキイキと感じることなどできるはずがありません。それでは、「人がどんな”不”を感じているか?」を感じ取ることもできるはずがないのです。

・人間というものは、自分が気持ちよく話すと、その話に付き合ってくれた相手に対して「感謝」の気持ちをもつものです。あるいは、「負い目」のようなものを感じると言ってもいいかもしれません。

・これは、マネージャーとしての「資質」を左右する、非常に重要なポイントです。トラブルを報告しにきた部下を責め立てるのが論外なのは言うまでもありませんが、そのときにわずかに「不機嫌」なそぶりを見せるだけでも、マネジメントに重大な問題が生じる結果を招くからです。

第3章(「権力」と「組織」を動かす)

・では、どうやって「風を読む」のか?もっとも重要なのは、「風上」で何が起きているかを知ることです。組織の方向性を決めているのは「権力」。つまり、社長をトップとする上層部こそが「風上」であり、そこで、どのような議論がされ、どのような動きがあるかを察知するべく、広く高くアンテナを立てておくのです。

・重要な情報は、人的ネットワークを通じて非公式な形でもたらされます。そして、そのようなネットワークを築き上げるためには、日々コツコツと、何年もかけて、多くのキーパーソンとの信頼関係をつくっていくほかありません。こればかりは、一朝一夕につくれるようなものではありません。その地道な努力を延々と続けることこそが、「企て」を成功させるために欠かせない「ディープ・スキル」なのです。

・「従来の枠組みに捉われず、自由な発想で考えてほしい」という言葉とは裏腹に、指示を出した上役の中には、本人も明確には自覚できていない、ぼんやりとした「思い」や「考え」が存在するからです。(自覚できていないからこそ、言語化できていないわけです)

・では、担当者は一体どうすべきなのでしょうか?上役の「言語化」をサポートすればいいのです。どんなに曖昧な指示であっても、その指示を出した上役の中には、なんらかの「思い」や「考え」が必ずあります。上役との対話を通して、それらに輪郭を与えるのです。

・「言語化力」とは、本来、「自分が頭の中で考えていることを言葉にして、それを相手が理解しやすいように整理して伝える能力」のことですが、率直に言って、それはビジネスパーソンとして”できて当たり前”のことです。それよりも、「相手が頭の中で考えていることを言葉にして、それを相手が理解しやすいように整理して伝える能力」こそが、人と組織を巧みに動かす、本当の意味での「ディープ・スキル」なのです。

・もしも、合理性による膠着状態に陥ったら、自社の「意志」に立ち戻ってください。リクルートに限らず、どんな企業にも経営理念やビジョンがあるはず。この「意志」に立ち戻ることこそが、「合理性の罠」を解決する「ディープ・スキル」なのです。

・対立を乗り越えるには、「お互いに”譲歩”することによって、”妥協点”を探る」のではなく、「”共通の利害”を探り当てる」ことが大切です。

第4章(「人間力」を磨く)

・むしろ、「分析力」「発想力」「構想力」などの能力はやや弱かったとしても、社内のさまざまな関係者と協力関係を築くことができる人物のほうがプロジェクト・リーダーとしては適任。「分析力」「発想力」「構想力」などの能力をもつメンバーを部下につけることで、リーダーの弱点は補うことが可能だからです。

・しかるべき人は、「成功」したか「失敗」したかではなく、どんなに苦しくても逃げずに「やり切ったかどうか」を見ています。そして、たとえ「失敗」に終わったとしても、「やるべきことをやり切った人物」に対して信頼を深めるとともに、高い評価を与えるのです。

コメント

まずは本自体がとても読みやすく感じた。

体裁や段組みなどの本の作りのせいなのか、著者の文章力なのかわからないがどんどんページが進む感覚で読めた。

内容としても今までのビジネス書ではあまり語られてこなかった、社内での立ち居振る舞い(決して出世のためにごまをするなどではなく)や上司に梯子を外されないようにするためのヒントなどが記載されている。

確かにすごく優秀な人が発案した、欠点のない構想であっても意外と社内で承認が降りなかったりする。わたしの周りでも2-3は思い当たる節がある。

そのときの取締役のパワーバランスや、取締役の任期、また次期社長のためのポスト争いなどから、各部署の関係性、各課の関係性、各チームの関係性と挙げればキリがないほど変数が多い。

こうした変数が少しでも変われば、ちょっと前まで通っていた意見や提案がまったく通らなくなる。

冷静に考えれば意見や提案の内容が変わっていないのであれば、周囲の環境や条件で対応が変わるのは非合理極まりないのだが、往々にして起こり得る話だ。

こういった状況を回避するべく、人間心理と組織力学に精通した洞察力を持ち、そのうえで行動し、人や組織を動かす実行力を発揮する人(=ディープ・スキルを有している)になるための処方箋が本書には書かれている。

こういった人間や組織の悪しき面に触れると、大概「だから日本人・日本の会社はダメだ」という日本人・日本会社論になりがちだが、この書籍はそういった点には触れず、現状の日本の会社でどうやって提案を通したり、事業を推進したりすることができるか、といった点にフォーカスされているのがいい。

日本人や日本の会社がすぐに変化することは難しいが、その環境下においてどう考え、どう関係性を築き、どうやって立ち居振る舞いするかは相対的に変えやすい。

本書のなかで出てくる具体例がどれも「あるあるネタ」に近しく思われ、それを読むだけでもとても参考になるはず。

自分としては新入社員というよりは、入社して5年目から10年目くらいの人が読むと、色々と学ぶべきことが多いように感じる。

一言学び

洞察力、行動力、そして実行力。


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