読書レビュー:『グローバルサウスの逆襲』(池上彰/佐藤優)

読書

読みたいと思ったきっかけ

佐藤優氏の著書、それも池上彰氏との共著であれば買わない理由はない。

この2人のシリーズはほとんどの書籍を買っているように思う。

読書レビュー:『世界の〝巨匠〟の失敗に学べ!-組織で生き延びる45の秘策』(池上彰/佐藤優)
今回の書籍は組織で生き延びるというテーマが決まっていることもあり、わたしが一番刺さったのは「人間が群れを作る動物である」ということと、「組織が人の力を引き上げることができる」という2点。 前者については当たり前すぎて普段意識することがないが、すべての喜怒哀楽の出発点は群れを作る動物であるという前提に起因しているように思う。 その意味でいうと、何か起きた時にはこの大前提に返って考えてみることも有用であるように感じる。 また「組織が人の力を引き上げることができる」という点については、組織そのものの光の部分にフォーカスしていることで希望を持てる。 組織というと、もはやその言葉自体にネガティブな印象がくっついてしまっているが、そういうマイナス側面以外にプラスの側面もあるということを頭に入れておくことで、組織に対して別の角度で考えられるはず。 その他にも「上司の言う一般論は一般論でない」「近代的なパッケージが時代にそぐわなくなっていきている」など気付きや学びになることが多くあった。 対談本であることからも読みやすいので、組織に属する方には是非読んでみてください。
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グローバルサウスの逆襲 (文春新書) [ 池上 彰 ]
価格:990円(税込、送料無料) (2024/8/19時点)


内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

はじめに 池上彰
プロローグ グローバルサウスの逆襲が始まった
第一章 中東情勢から動向を読み解く
第二章 アジアの均衡が崩れるとき
第三章 ロシアと結びつくアフリカ
第四章 アメリカ大統領選が世界最大のリスク
エピローグ グローバルサウスは福音か、混沌か
おわりに   佐藤優

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

はじめに(池上彰)

※特になし

プロローグ(グローバルサウスの逆襲が始まった)

■グローバルサウスとは、アフリカ、中東、アジア、ラテンアメリカのなかで、新興国や発展途上国と呼ばれてきた国の総称です。国力をつけて存在感を高めてきたため、大いに注目されています。(池上)

■ヒト・モノ・カネの移動が自由で国境の壁が低くなる「グローバル」よりも、国家間関係を重視する「インターナショナル」の方が概念として適切と思います。グローバルノース対サウスインターナショナルという図式の方が正確かと思いますが、本書ではメディアに広く流通しているグローバルサウスという言葉を使います。(佐藤)

■「よくわからないけれども絶対に正しい」と熱烈に支持させることこそ、政治力です。それを反知性主義と呼ぶか、「実存的に現実と向き合っている」と判断するかは、評価の違いです。(佐藤)

■鉄、石油、小麦といった実態と結びついたフローとストックの合計が本当の国力だというのは、この戦争(評者註:2022年2月24日から始まったロシア・ウクライナ戦争)がなければわからなかったことです。(佐藤)

■なぜ太平洋戦争という名前が付いたかというと、大西洋からドレーク海峡を通ると大変な悪天候で、越えたら急に穏やかな海になったものだから、パシフィックオーシャンと付けたんです。(池上)

第一章(中東情勢から動向を読み解く)

■この議論は、当時、ほぼ理解されず、『エルサレムのアイヒマン』もつい最近までヘブライ語に訳されていなかった。しかし、当時受け入れられなかった論理が、現在、ハマスに適用されています。「公務員や教師や看護師たちは、確かにハマスの戦闘活動に直接従事してはない。しかし、システムの一員としてハマスを支えている」と。ハマス掃討作戦は、アーレント理論の適用でもあるといえます。(佐藤)

第二章(アジアの均衡が崩れるとき)

■戦略的互恵とは、第三国との関係でも両国の利益を調整するということです。対立する部分より共通する利益が大きくなれば、世界から見た日本は親中としか思われません。すなわち大部分の官僚は、中国と喧嘩するつもりがないんです。取り残されて「中国の脅威に備えよ」と興奮しているのは、防衛省のほとんどと外務省の一部だけ。そのギャップが滑稽です。(佐藤)

■台湾はもはや「日本にとって都合の良い、反中の仲間」ではなく、ある意味、日本より豊かで、自前の利害計算と独自の判断で国際的なポジションを決める地域とみた方がいい。(佐藤)

■資本主義が行き過ぎてしまったのが原因でしょう。私が知っている40代くらいの韓国人たちは、オーストラリアやカナダへ移住し始めています。競争社会の韓国で勝ち残ってきた自分たちなら、世界のどこへ行っても生き残れるという自信があるようです。少子化が進む東アジア諸国の中でも、日本は優等生ではないかと思えてきます。(佐藤)

■日本の外務省の課題は、インドネシア語のキャリア職員をつくることですね。研修期間を3年間にして、1年はアメリカかイギリスで、その後の2年間はインドネシアで研修させる。インドネシアは若い国ですから、いまの大学生でも20年ぐらい経てば国家のトップになる。早いうちに戦略的にインドネシアに人脈をつくっておくのがよいでしょう。(佐藤)

第三章(ロシアと結びつくアフリカ)

■今後、薬を巡る問題は非常に大きくなるでしょう。南米アマゾン川の流域では、欧米の製薬会社がジャングルの中の微生物などを採取して、薬につながる化合物を取り出す研究を行っています。これに対して、「広い意味での知的財産は自分たちのものだ」という言い分が出ています。ブラジル政府は、勝手な採取を厳しく取り締まり始めました。(池上)

第四章(アメリカ大統領選が世界最大のリスク)

■近代的な国家システムは、選挙によって選ばれた政治家と、資格試験によって登用された官僚で成り立っています。しかし、正規の手続きを経ていないのに経済や教育の政治的な決定に関与する人たちがいます。(佐藤)

■会社でも同じですが、お爺ちゃんの特徴というのは「俺がいなくなったら、この組織は潰れる」と信じて居座ることです。そういうお年寄りが居座ると、組織はそのせいで停滞するものですけど。(佐藤)

エピローグ(グローバルサウスは福音か、混沌か)

■最近、日本の議論を見ていてダメだなと思うのは、日本を国として受動的な客体だと位置づけてしまっていることです。いろいろなことが、能動的にできるにもかかわらず。(佐藤)政治や外交でも、安全保障においても完全に受動的で、アメリカに何か言われたら聞かざるを得ないと思い込んできましたからね。(池上)

おわりに(佐藤優)

※特になし

コメント

グローバルサウスをキーワードとしながら、現在の国際関係における問題やニュースを取り扱っている。

「グローバルサウスとは、アフリカ、中東、アジア、ラテンアメリカのなかで、新興国や発展途上国と呼ばれてきた国の総称」ということだが、まだ国際的に決まった定義があるわけではないとも本書に記載がある。

人口動態やそれに伴う経済発展によって、今後ますます発言権が強くなっていくであろうグローバルサウスとの関係で日本はどういった対応をするべきか、そのための現状把握に必要になりそうな情報を広く扱っている印象。

個人的には佐藤優氏の「早いうちに戦略的にインドネシアに人脈をつくっておくのがよいでしょう」という指摘が気になった。

インドネシアが潜在的な味方にもなり得るし、海洋国家として脅威にもなり得るために、日本としても対処しておく必要があるという指摘は盲点だった。

人口が増えていることや世界最大のイスラム教徒を有する国であるということは知っていたが、地政学的な重要性は盲点だった。

こういうと打算的であるが、自分としてもインドネシアの動向をチェックしていく必要を感じた。

一言学び

早いうちに戦略的にインドネシアに人脈をつくっておくのがよいでしょう。

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