読書レビュー:『アウトプット思考 1の情報から10の答えを導き出すプロの技術』(内田和成)

読書

読みたいと思ったきっかけ

たまたまネットで見つけたのがきっかけ。帯の推薦で楠木建氏の名前があったのも目に留まった理由なので、その意味でいうと出版社の策略にうまく引っかかったとも言える・・・。

ただ、買ってから気がついたのだが、本書は2011年に刊行された『プロの知的生産術』に大幅な加筆・訂正を行い、1冊にまとめたもの、ということで完全に新しいものではない。

この手の「大幅な加筆・修正」って基準とかあるのだろうか・・・。

オリジナルの何割変わったら「大幅な加筆・修正」って決まってなさそうではあるが、そうなると本によっては昔の本を参考にすればいいという可能性も出てきそう。


内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

 

はじめに 「人とは違う視点」を手に入れるために
第1章 「インプット」では差がつかない時代
第2章 「アウトプット」から始める情報術ーー最速で成果にたどり着くために
第3章 自分の「立ち位置」を意識することが、差別化の第一歩
第4章 知的生産の秘蔵のノウハウ「20の引き出し」
第5章 最もラクな差別化戦略「デジタルとアナログの使い分け」
第6章 (私の情報源①)コンサルタントが最も重視する「現場情報」の集め方
第7章 (私の情報源②)新聞・雑誌、本、テレビ、ネット……各種メディアとのつきあい方
おわりに    

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

はじめに(「人とは違う視点」を手に入れるために)

■しかし、せっかく集めた情報のほとんどは、活用されることなく終わってしまう。インプットにかける労力と比べ、それを活用(アウトプット)する場面は極めて少ない。これでは割に合わないと感じるようになった。そこで発想を変えた。インプットを最小にして、アウトプットを最大にすることができないかと考えるようになったのだ。

第1章(「インプット」では差がつかない時代)

■つまり、完璧に情報が出揃うまで意思決定しようとしない人や企業は、堀さん(評者注:堀紘一)に言わせれば「レースが終わってから賭けている」。つまり、他社がとっくに実行していたり、ブームがとっくに過ぎ去ってしまってから意思決定するようなもの。完璧な情報を集めようとすると、常にtoo lateになってしまうというわけだ。

■具体的には、自分のスタンスを明確にし、そこに引っかかったものだけをピックアップする。例えば自分の目的が「意思決定」ならば、その目的を意識したうえで、必要最低限の情報だけを集める。「説得」ならば、相手が必要な情報は何で、自分には何が求められているのかを明確にしたうえで情報を収集する。あるいは、自分の志向=得意分野を明確にし、その情報だけが入ってくる仕組みを作る。これが、私が本書で提案したい情報術である。

■例えばあなたが何かの文章をSNSに書くとする。これもいわばアウトプットだ。しかし、その先には「専門家としての自分のブランディング」や、「SNSでつながっている仲間との関係性の強化」など、本当の目的があるはずだ。それを意識せずに文章を書いたところで、自己満足にしかならない恐れがある。「自分のアウトプットとは何か」が不明瞭な人もいるはずだ。ぜひ一度、考えてみていただきたい。

■では、仕事と作業の違いとは何か。私の定義では、「ある目的を達成すること」が仕事であり、「その目的を達成するための手段」が作業ということになる。

第2章(「アウトプット」から始める情報術ーー最速で成果にたどり着くために)

■これを情報理論にあてはめ、エントロピーを「事象の不確かさ」と定義すると、エントロピーが減少すればするほど、事象の確実性は高まるということになる。つまり、エントロピーを減少させる方向に働く情報こそが、物事の確実性を高める、優れた情報ということになる。そういう意味で、「マイナスのエントロピー」と定義しているわけである。

■膨大な情報の中から、何が「エントロピーを減少させる情報か」を考えることが、意思決定のための情報収集の助けとなるのだ。

■情報が多ければ多いほどエントロピーが増加し、決断ができなくなってしまうのだ。昔の人は「下手の考え休むに似たり」と言ったが、言い得て妙である。

■逆に、たった1つの情報でも、そこから素晴らしいアイデアが湧いてくるのなら、それこそが意味のある情報となる。私はこうした情報を「スパークを生む情報」と呼んでいる。

■異なる認識を持つ人同士が議論を効果的に進めるには、自分たちの間で何が共通の情報で、何が自分だけの情報か、あるいは何がお互いの間で食い違っているかを早い段階で把握することだ。

■これは営業に限らず、どんな場面でも有効だ。足りない情報を引き出し、相手との認識を揃える。

第3章(自分の「立ち位置」を意識することが、差別化の第一歩)

■どんな組織にも、地位や肩書きとは別に、その人が暗黙のうちに求められている役割がある。これを「期待される役割=期待役割」と呼ぶことにする。この期待役割を把握しておくことは、情報収集はもちろん、キャリアプランを考えるにあたっても極めて重要だ。

■多くのプロは、チームの中で求められていることと自分のできることを必死にすり合わせ、そのうえで個性を発揮して成果を出そうとしているのだ。

■コンサルタントはみな、「データ分析においてあの人に勝つのは難しい。ならば企画力で勝負しよう」「小売業界についてはあの人がエキスパートと見なされているから、自分は別の業界のスペシャリストになろう」といったことを、無意識のうちに考えているものだ。

第4章(知的生産の秘蔵のノウハウ「20の引き出し」)

■この「引き出しを作ってみる」という作業は、自分の興味・関心を棚卸しする、ということでもある。すると、自分がどんな分野に関心を持っているかを再認識できるようになるとともに、その分野に対する情報に自然と関心が向き、集まりやすくなってくるわけだ。

■これについて司会の村上龍氏が「子供に限らず、人間というものは教育や学習と思って学んだことは脳の浅い部分にしか入らないのでなかなか覚えられない。それに対して、遊びを通じて学んだことは脳の深いところに入っていくのでよく記憶に残るし、学習できる」ということを言っていたのだが、情報収集についてもまさに同じである。つまり、ストレスを感じることなく、楽しく情報収集したほうが記憶にも残るし、アイデアも湧いてくる、ということだ。

■結局、いくらITが進化して情報アプリやデータベースが充実し、検索性が高まったとしても、「面白い」というキーワードで検索はかけられない。しかし、自分にとって「面白い」と感じたものこそが、本当に重要な情報なのである。

第5章(最もラクな差別化戦略「デジタルとアナログの使い分け」)

■もちろん、どこで差別化を図るかは人によって違うはずだ。大事なことは、自分がどこで食っていけるか(あるいは組織の中で差別化できるか)常に意識すること。その部分の腕を徐々に磨いて、自分の強みを確立してほしい。

第6章((私の情報源①)コンサルタントが最も重視する「現場情報」の集め方)

■ここでもう1つ、資料は「与えられるもの」だけではなく、「出してもらうもの」だという意識を持つことにも言及しておきたい。これもコンサルティングの例で言えば、会社の財務諸表などは、こちらが黙っていても出てくる。一方、例えば「社史」や「お客様センターの過去1年分のログ」などは、普通は言わないと出てこない。だが、こうした資料の中に課題解決のヒントが隠れているということは多々ある。

第7章((私の情報源②)新聞・雑誌、本、テレビ、ネット……各種メディアとのつきあい方)

■しかし、若い人がこれだけ新聞を読まなくなると、こうした身だしなみとしての役割も、もう数年で完全に過去の遺物となっていくのかもしれない。ただ、これも一概に悪いこととは言えない。というのも、読む人が少なくなればなるほど、新聞は「レア」な情報源となるからだ。

コメント

すごく目新しいことが書いてあるというわけでもなのだが、ついつい忘れがちなインプットとアウトプットの関係やその考え方の本質が平易に説かれている。

特に差別化を如何に図るかという視点はあらゆる分野や活動において重要になってくる。

日々過ごしていると忘れてしまいがちであるが、人とは違うものをどうやって確保していくか。

この視点をもって生活するのとしないのとではインプットも当然違ってくる。

大事なことは、自分がどこで食っていけるか(あるいは組織の中で差別化できるか)常に意識すること」とあるように、市場において差別化することが難しいのであれば、まずは組織内での差別化を意識するというのは、組織内での生き残りという意味で大事になってくる。

どこの場において相対的に自分が優位な部分が少なからずあるはず。

それを意識して仕事や業務を行えば、その組織内での相対的なポジションは上昇し、周りと差別化することができる。

期待役割、マイナスのエントロピー、スパークを生む情報など、著者独自と思われるキーワードがあるのも、本書の内容を思い出すトリガーとして役立ちそう。

本書は、思考の土台となる考え方を掴むのに役立つはず。

一言学び

自分がどこで食っていけるか(あるいは組織の中で差別化できるか)常に意識すること。


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