読みたいと思ったきっかけ
以前読んだ高松智史氏の『変える技術、考える技術』のなかで「本当にじっくり読んだもの」として紹介されていたの見て興味が出たのが購入したきっかけ。
内容
目次
目次は以下のとおりとなっている。
プロローグ | ||
第1章 | : | 見せかけの成功物語 |
第2章 | : | 幸福と不幸の狭間で |
第3章 | : | 優しさの罠 |
第4章 | : | 成功の果てに |
エピローグ |
内容
わたしの気になった箇所について記載する。
プロローグ
■問題は、パターンが見えないためにパターンに翻弄されていることだ。その結果、どの会社も他社と同じような間違いを、他社と同じようにしているのだが、他社と同じように問題が表面化するまで何もアクションを起こせない。その結果、他社と同じように、家族や社員が犠牲になる。
第1章(見せかけの成功物語)
■タイミングだよ。ビジネスで成功するためには、第一にタイミング、第二にタイミング、第三にタイミングだ。つまり、いつ市場に参入するかが鍵なんだ。参入タイミングさえ間違えなければ、順調に会社は立ち上がる。一度立ち上がってしまえば、あとはエスカレーターに乗せられたように、自動的に売り上げがあがっていく。
■(評者注:成長カーブは)MBA(経営学修士)の教科書を読むと、ほんの数ページだけ解説されている。でも、このカーブから読み取れる知識は深遠で、数ページではとても語りきれない。このカーブにはビジネスで成功するための学びのすべて、さらには人生を十二分に生きるための学びのすべてが詰まっているといってもいいぐらいだよ。
■僕がビジネスモデルを判断するときには、大きなチェックポイントが三つある。第一のポイントは、このビジネスまたは商品が成長カーブのどこに位置づけられているのか。第二のポイントは、ライバル会社との比較で優位性があるかどうか。第三のポイントは、ビジネスを継続するためにじゅうぶんな粗利が確保できるモデルか。最低限これらをクリアしていないと、どんなに工夫してもビジネスとして成立しないんだ。
■タクは、どこに広告を出せば効率的に顧客が集まるかという知識がないだろう。これは残念なことにMBAでも教えてくれない。事業を成立されるうえではもっとも重要な知識なんだけどね。
■そもそもMBAというのは、マスター・オブ・ビジネス・アドミニストレーション。アドミニストレーションってわかるよね。管理のことだよ。MBAで学ぶのは経営管理のための知識であって、クリエーション、つまり創造のための知識じゃないんだよね。
■お客様の声というのは、ビジネスの根本だ。だからシンプルながら、もっとも効果的な広告になるんだよ。どんなにうまく宣伝しても、自分の商品を自分で素晴らしいですというのと、顧客がこの商品は素晴らしいです、というのとではまったく違う。100回自分で宣伝するよりは、ひとりの顧客の声を聞かせたほうが効果的だ。
■結果的に、無料のほうが早く、しかも安くビジネスが立ち上がる。私は開業のときにセミナーをやったのだけど、それは無料どころか、中華料理をおごるからといって友人・知人に集まってもらったよ。つまりワイロを出して来てもらったんだよ。しかし、それで講演実績ができた。その実績をホームページで案内する。すると間もなく、今度は講師料を払うから講演に来てくれ、という依頼が舞い込みはじめた。
第2章(幸福と不幸の狭間で)
■何か大切なものをひとつ手放すと、それを上回るギフトが得られる。これが世の中の法則だ。
■あなたが思う以上に、ビジネスと家庭とは密接に関連している。ビジネスが成長することで生じる歪みが、家庭にまで及ぶ。そして、それはあなた自身ではなく、あなたのもっとも大事なものーーパートナーや子供の健康まで侵食していく危険性もあるのだ。
■こういう感情のメカニズムがあるから、伸び盛りに差しかかった経営者や、大企業でも出世コースに乗った人の家庭では、このような罠に嵌ることが多いのさ。
■そこがジレンマなんだよ。そもそも立ち上げ時期はビジネスに全精力を取られる。経営者にとって創業期の会社は赤ん坊のようなものだ。その赤ん坊を放り出して楽に儲けようというのは、現実には無理な話。24時間、真剣に関わらなければならない。だからこそ、妻がそういう状況をわかったうえで耐えてくれるか。夫が妻のサポートを心から感謝し、ねぎらうことができるか。そしてビジネスをできるだけ早く軌道に乗せ、軌道に乗ったら仕事中毒になる前に、家庭とのバランスを取ることが必要となる。
■成長期の前半に恋愛が起こりやすい理由はね、英雄、色を好むっていうだろう。そこにヒントがある。性的なエネルギーと創造のエネルギーの根源は一緒だ。考えてみれば、愛があるから、子供が生まれる。つまり愛があるから、創造されるというのと同じだ。創造性を発揮しているときには、同時に性的エネルギーも高まるわけだ。だからタクも何かを生み出そうとしているときには、性欲が高まるんじゃないか?
■「ということは、学校でのいじめも、母親の怒りが学校内で再現されているんですね?」「そうなんだ。怒りというのは伝染する。怒りのキャッチボールを社会全体でおこなっているのが、現代という時代だ」「その怒りの原点が、経営者なんですね」
■日本の会社の90%以上が、年商10億円以下の零細・小企業だ。なぜかといえば、この第二創業期の壁が非情に厚い。年商8億円ぐらいの会社が、来年は10億を目指すぞと頑張ったとたん、さまざまな問題が起こって、年商6億円に後戻りする。山に登ったと思ったら、こんどは谷を下る。ほとんどの経営者が、このパターンをおいて疲れるまで繰り返す。
第3章(優しさの罠)
■「この怒りを電話受付の担当者は受けるわけだけど、怒りというのは行動によってしか解消されない。ところが、お客様は神様だという思想が社内に根強かったとするだろう。すると、その怒りを社員は会社で出すことができずに、家庭に持ち帰るわけだ」 怒りのキャッチボールが会社と家庭でおこなわれていることを理解して、タクはぞっとした。ここでもまた、経営と家庭は切り離せない関係になっている。
■優れたチームを育てるのは、子育てと同じなんだ。母乳を与える前にハイハイの練習をさせても、子供は育たない。何を、どの順番で行動していくかが重要なんだ。チームも同じ。育て方の順番を間違えてしまうと、どんなに時間をかけようと育ってくれない。
■「だから、少なくとも7回いわないと社員は覚えない、とよくいわれるのですね」「そう。もしくは飲みュ二ケーションで、とことん時間をかけて語りかける。こうすることによって会社の価値観に沿った、基本的な能力レベルの高い社員が育っていくわけだ」
■そう、苦しければ苦しいほど、歯を食いしばってでも苦しさを見せてはいけない
■タクは、心が沈み込んでいる場合には、かえってネガティブな感情をすべて出してしまったほうがいいことを直感的に知っていた。早めに底を打って、客観的な思考に戻りやすくするのだ。タクは数多くの障害を乗り越えてきて、乗り越え方のパターンを習得しはじめていた。
第4章(成功の果てに)
■会社が成長していくためには、四人の役者が必要だ。起業家、実務家、管理者、まとめ役の四人だ。この役者のうち誰が活躍するかは、会社のライフサイクルごとに異なるんだ。
■会社が大きかったり、また会社の分裂が深刻だったりする場合には、もうひとりまとめ役が出てくることがある。これが問題社員だよ。問題社員が病気になることによって、その人のケアのために会社がまとまる。または問題社員の悪口をいいあうことによって、他の社員がまとまるんだよ。要するにスケープゴートであって、会社のために犠牲になってくれているわけだ。
■起業家は自由と混乱が大好きだ。管理者は規則と安定が好き。会社にとってどちらも必要なのだが、起業家のエネルギーが強すぎると、管理部門が弱体化する。会社はいつになってもシステム化することができず、家業のままにとどまってしまう。
■会社とは、そこに集うひとりひとりが、本来の自分を発見する場所だ。その過程は、楽しいことばかりじゃない。どちらかといえば挫折が多いだろう。でも挫折を乗り越えて、はじめて自分自身の輝く部分に出会える。そして宝を持ち帰る。宝とは、自分には力があるという自覚だ。
エピローグ
■多くの場合、仕事で成功することと家庭で成功することは別のトピックとして論じられる。しかし、数千社の経営者との関わりを通して私が痛切に感じたのは、その両者がきわめて密接に関わっているということだ。
コメント
抜群に面白かった。
読み出すと止められずに一気に読み終えてしまった。
小説形式をとっていることもあって読みやすいのだが、何より内容が面白い。
基本的には脱サラして起業した主人公の物語なのであるが、そこに成功のための法則が散りばめられている。
成功するにあたってどういった時間経過で何が起き、どうやって対処するべきなのかが具体的にストーリーとして語られるので頭に入ってきやすい。
もちろん起業家、社長としての視点であるので、必ずしも自分のようなサラリーマンにとってはすべてが参考になるわけではないが、組織がどうやって成長し、回っていくかを知ることができる。
そして本書の白眉は、仕事と家庭の密接な関連性を明らかにしている点にある。
往々にして仕事と家庭は別問題として語られやすいし、特に昔の世代の人にその傾向があるように感じている。(偏見だが)
しかしながら、当然のことだが仕事をしている自分も、家庭にいる自分も同じ一人の人間であり、両者を完全に分けて生きていける人はいない。
仕事で問題を抱えれば家庭にも影響は出るし、家庭で問題が出れば仕事にも影響する。
よく考えれば当たり前のことであるのだが、意外と誰もこの点を指摘しない。
「家庭の話を仕事に持ち込むな」というようなフレーズに代表されるが、仕事と家庭のリンクに触れることはどこかタブーに近い印象がある。
本書は起業家の仕事と家庭の関係を中心に話を展開していくが、このことは起業家でないサラリーマンであっても当てはまるし、参考になる。
自分としても、家庭の問題から目を背けるために、ついつい仕事の世界に逃げてしまいたくなる欲求に駆られることがあるし、実際にそうした振る舞いをしてしまったときもある。
ただ、それでは家庭の問題が解決するわけではないし、その未解決が仕事にも影響してくる可能性は十分にあり得る。
家庭の問題だからと蔑ろにする態度は、回り回って仕事に影響してしまうことを考えれば、家庭にもしっかりと向き合っていくことは必須だろう。
この重要な指摘を小説を通して追体験できるのが本書のすごいところ。
もちろん単純に読み物としても面白い。オススメの1冊。
一言学び
ビジネスと家庭とは密接に関連している。ビジネスが成長することで生じる歪みが、家庭にまで及ぶ。
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