
読書レビュー:『読解力の強化書』(佐藤優)
メインとしては三浦綾子の『塩狩峠』の読解を通して、行間を読む力、すなわち真の読解力を身につけるためのヒントが述べられている。
行間を読む力。
テクストではなくコンテクストを重視する姿勢ともいえようか。
このコンテクストを理解する力の重要性については、確かにあらゆる場面で痛感することができる。
仕事でも友人関係、家族関係でも、人間同士のコンタクトがある場所ではどこでもコンテクストが存在する。そしてそこに流れる文脈を無視して言動することで何かしらトラブルが生じる。
当たり前のことだが、ついつい忘れがちである。
この本のなかで「文学作品を単なる娯楽や読み物だとして、低く見る傾向があります。それよりも学術書や専門書の方が価値が高く、レベルが高いように考えがちです」とある。
これはまさしく自分の高校・大学時代の考えだった。小説を読むという行為を単なる娯楽としてしか認識していなかった。
そこには「小説は役に立たない」という思い込みがあったように思う。
当時は「読書=何かを学習する」という定式化のもとに本を読んでいたので、小説はその範疇にはいっていなかった。
しかし、今となってはこの小説を軽視してきた姿勢を猛省している。
学生時代という社会人と比べて圧倒的に時間のあるときにこそ小説を読んでおくべきだった・・・。
後悔先に立たずで、いまさら嘆いても仕方ないのだが。
今からでも遅くないと信じて、これからは小説も少しずつ読んでいきたい。特にこの本でも薦められている夏目漱石については、わたしは前期三部作と『こころ』しか読んだことないし、今となっては内容もほとんど忘れている。それらの読み直しから始めて、夏目漱石のその他の作品も読んでいきたいところ。
行間を読む力を鍛えるという目的で小説を読む姿勢が良いのか悪いのかわからないが、とりあえず実行してみたい。