読書レビュー:『結果を出すリーダーはみな非情である』(冨山和彦)

読書

読みたいと思ったきっかけ

先日読んだ『リーダーの教養書』のリーダーシップの項目の箇所で推薦書として挙げられていたのが本書。

冨山和彦氏の著作は気になるものがいっぱいあったが、なんだかんだで読むのは初めてだ。

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内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

 

まえがき    
第1章 なぜ若いうちからリーダーシップが必要なのか
第2章 現実を直視する 日本と日本企業と「ニッポンの課長」の命運
第3章 リーダーシップの条件1 論理的な思考力、合的な判断力が不可欠である
第4章 リーダーシップの条件2 コミュニケーションは情に訴え根負けを誘う
第5章 リーダーシップの条件3 実践で役立つ戦略・組織論を押さえる
第6章 リーダーシップの条件4 評価し、評価されることの本質を知る
あとがき    

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

第1章(なぜ若いうちからリーダーシップが必要なのか)

・このような実力主義と形式(年功や門閥)主義の交代パターンは、いつの時代も繰り返すのである。

・なおかつ社内で自他共に認める社長候補のひとりというような人間には一番情報が集まる。上からも下からも情報が集まり、特に下の年代に対して大変大きな影響力を持つ。

・課長のときに責任転嫁ばかりしている人、ストレスから逃げてばかりいる人は、それより上のポジションに上がったとき使い物にならない。逆に、意識して自分に負荷をかける、自分をストレスフルな立場に置いてみるくらいのことをやっておいたほうがよい。

第2章(現実を直視する 日本と日本企業と「ニッポンの課長」の命運)

・トップリーダーを目指し、真のミドルリーダーとして自分を本気で磨くか、管理職など目指さずに現場スキルの職人芸で勝負するのか、はっきりさせたほうがいいように思う。中途半端な出世欲を捨てることで、わけのわからない人間関係や、経営目標のノルマや、そこから生まれる板挟みに心悩ますことなく、マイペースで人生を送ることができるかもしれない。もちろん、自分の現場スキルがどの会社に行っても高く買ってもらえる場合(これは実際、10年、20年という長い時間軸では非情にまれ)か、運よく自分の定年退職までそこそこ調子よく持ってくれそうな会社で働いている(これも結果論なので、今の時点では誰にもわからない)場合に限った話だが。

・この教訓は課長世代にも当てはまる。中間管理職の人たちは、こういう流動性の高い時代だからこそ、部下の育成に真剣にエネルギーを投入すべきである。

第3章(リーダーシップの条件1 論理的な思考力、合的な判断力が不可欠である)

・少なくとも、20〜30代のうちは、合理的・論理的に考える訓練を積み重ねておかなければならない。そうしないと、判断の手前で重大な問題を見逃している危険性があるにもかかわらず、自分の情緒的直感に頼るようになってしまう。

第4章(リーダーシップの条件2 コミュニケーションは情に訴え根負けを誘う)

・競争する訓練を受けていないと、実際に自分が決断をする立場になったとき、判断能力の弱い人間になってしまう。物事はなんでもそうだが、まず判断するという作業があって、その判断に基づいて行動を起こすことになる。

・守旧派は常に団結し、改革派は常に分裂するのだ。守旧派の中の知恵者は、当然、改革派のそういう弱点をついてくる。

・欧米はもちろん、中華圏やインド圏の30代、40代の大卒クラスの人々と比べても、日本の大人は、本当に勉強しない。人間として勝負していくうえで、きちんとした学問はやっておくに越したことはない。なぜなら、学問をやるということは、頭に汗をかかせるということであり、それは「考える」ことだからだ。本書で何度も繰り返しているとおり、考える力のないやつが、政治や経済の競争で勝てることはまずない。正しく考えることは、正しく判断し行動する前提条件なのだ。

第5章(リーダーシップの条件3 実践で役立つ戦略・組織論を押さえる)

・戦略を考える前提要素は、前述の①経済構造、そしてよく言われる②市場環境、③競争ポジションの理解、の3つである。現実の戦略行動として実践しづらいのは、現実にはこの3つがすんなりと整合しない場合が多いためだ。

・だから、ミドルマネジメント世代のみなさんは、最新の理論を紹介した本や、最近のリーダー本を読む前に、まずは、東西の古典と呼ばれる本をじっくり読むことを薦める。

・同じ時期、政府中枢の実質的な意思決定メカニズムや法案の成立過程などもかなり間近で見てきたが、国家レベルの重要なスキームであってもこのへんの真理は同様だ。やはり実質的に物事を「正しく」決めているのは、数人の課長クラスの官僚と外部ブレーンであったりする。

第6章(リーダーシップの条件4 評価し、評価されることの本質を知る)

・とにかく敗北をしっかりと抱きしめ、それが会社やまわりに与える被害を最小化するために身を呈して最後まで頑張り、最終責任を引き受けるような見事な負けっぷりができる人物は、将来、超有望である。

・自分とは相性が合わないと思っている相手、どんなに嫌なやつであっても、比較優位は必ず持っている。それを冷静な目で見つめて、能力を最大限に引き出すのが、チームリーダーの仕事である。

・私は、経験上、人間の行動は「性格とインセンティブの奴隷」だと考えている。インセンティブとは、価値観と言い換えてもいい。ケミストリーが合うとか合わないという背景には、多くの場合、性格的な相性と価値観の相違が重なっている。

コメント

ミドルマネジメント世代(30代から40代)に向けてリーダーシップとは何であって、それが何故必要で、どうすれば身につけられるのか、が説明される。

日本人はリーダーシップが足りないという言説はよく聞くが、それは結局組織の意思決定の構造に起因するものだと思う。

オーナー企業はともかく、それ以外の企業では合議体の決定として物事が推進されるので、強いリーダーシップが不要ということだったのだろう。

決断のスピードが求められる環境においては、合議体の決定プロセスでは遅く、だからこそリーダーが率先して決めていく必要がある。

ただ、その決断を実施するには多くの経験が必要であろうし、50代でトップに立って初めて決断することになっても、急にできるはずがない。

だからこそミドルマネジメント世代からリーダーシップを取って決める訓練をしておきましょう、ということだろう。

本書の中で記載されるリーダーシップの磨き方はどれも参考になるが、個人的に合点いったのは「社内で自他共に認める社長候補のひとりというような人間には一番情報が集まる。上からも下からも情報が集まり、特に下の年代に対して大変大きな影響力を持つ」という箇所。

ここは別にリーダーシップの磨き方とは関係ないのだが、組織の意思決定構造を把握するにあたり重要な視点だと思った。

情報が集まってくるハブにいる人が結局は一番力を持つように組織はなっている。

会社で言えば経営企画だったり、役所でいえば大臣官房だったり、とにかく情報が集約される場所にいる責任者、担当者が1番影響力がある。

組織で影響を持ちたいと思ったらやっぱり情報が集まる場所、ポジションに就くのが重要だと改めて認識した。

情報を持っているというのはそれだけで価値になる、ということなのだろう。

組織内で誰が影響力があるかを知りたければ、情報が1番集まっている人を探せばいいともいえる。

この視点をもって人事異動なども眺めてみると色々とわかることもありそう。

2012年初版の本で、もう10年以上前の書籍であるが、内容は古びていないし得られるものは未だに多いと思う。

一言学び

実質的に物事を「正しく」決めているのは、数人の課長クラスの官僚と外部ブレーンであったりする。

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