読書レビュー:『「これから何が起こるのか」を知るための教養 SF超入門』(冬木糸一)

読書

読みたいと思ったきっかけ

書店で平積みされているのをたまたま目にしたのかがきっかけ。


内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

 

推薦の辞    
はじめに    
Part 1 最新の「テクノロジー」を知る
Chapter 1 仮想世界・メタバース
Chapter 2 人工知能・ロボット
Chapter 3 不死・医療
Chapter 4 生物工学
Chapter 5 宇宙開発
Chapter 6 軌道エレベーター
Part2 必ず起こる「災害」を知る
Chapter 7 地震・火山噴火
Chapter 8 感染症
Chapter 9 気候変動
Chapter 10 戦争
Chapter 11 宇宙災害(隕石の衝突、太陽フレア)
Part 3 「人間社会の末路」を知る
Chapter 12 管理社会・未来の政治
Chapter 13 ジェンダー
Chapter 14 マインド・アップロード
Chapter 15 時間
Chapter 16 ファーストコンタクト
Chapter 17 地球外生命・宇宙生物学
おわりに    

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

推薦の辞

■多かれ少なかれ、ビジネスは世の中を少しずつ未来に前進させるためにある。民間事業に限らず、公務員の仕事でも、教育関係でもそれは同じだ。すると本来どんな仕事でもそもそも大事なのは、未来を考えること、すなわち「未来への想像力の形式知化」なのだ。われわれは誰でも、未来がどのようなものかの正解を知らない。だからこそ想像力を膨らませ、それを言葉や文章で形にして、その想像した未来を見据えながら自分がいますべきことを考え、仲間と議論し、前進することが重要なのだ。そして、その「未来への想像力の形式知化」のもっとも有力な手段がSFである。(入山章栄)

Chapter 1(仮想世界・メタバース)

■たとえば、われわれが普段用いる日本語や英語といった「人間が扱いやすい、わかりやすい言語」の奥には、マシン語に相当する、バベルの塔でいうところの「最初に誰もが共通言語として話していた言葉」、人間の脳に直接作用する深層言語とでもいうべきものが存在し、それを用いることができれば、他人を自由自在に操ることも可能なのではないかーーと。(『スノウ・クラッシュ』)

■ゲームで育ってきた世代は、歳をとってもゲームで遊ぶ。そう考えると、本作で描かれていく、ゲーマーたちが社会の技術革新を担い、仮想世界のゲームに老人たちがあふれかえるといった未来像は、そう的はずれなものではない。その意味では、高齢化社会の行き着く先を想像させる作品ともいえるだろう。(『セルフ・クラフト・ワールド』)

Chapter 2(人工知能・ロボット)

■さらに続けて、ディックはこう言い切るーーわれわれは人や人間といった概念を、その起源や本体論に基づいてではなく、この世界での存在のありかたに基づいて適用すべきだと。人間が体の一部をサイボーグ化する一方で、アンドロイドや機械がその構造に純生物学的な要素を取り込んでいくようになれば、両者の成り立ちに差はほとんどなくなっていく。そのとき、人間性の本質とは、いかに「人間的なふるまい」をしたかどうか(たとえば他人に対して親切に接する、など)によって決められるべきだというのである。(『アンドロイド電気羊の夢を見るか?』)

■このように、身近なAIやロボットが自分たちの都合がいいように人間を操作している可能性があるとき、われわれはその事態にどう対処すればいいのか。それが、本作の中心テーマのひとつである。(『BEATLESS』)

Chapter 4(生物工学)

■現実では、先述のようなブタなどで人間用の臓器をつくる実験が先行しており、本作で描かれるような、臓器提供用のクローン人間が登場することはなさそうだ。だが、「この世界は、無慈悲で、残酷な世界でもある」という観点それ自体は、捨ててはいけないものだ。(『わたしを離さないで』)

■一般的には、本作は「ゴシック小説」に分類される作品だ。これは、中世ゴシック風の古城や寺院、屋敷などを舞台に展開する、神秘・恐怖・幻想色の強いジャンルを指す。(『フランケンシュタイン』)

Chapter 5(宇宙開発)

■その理由は、赤道上に近ければ近いほど打ち上げには有利だからだ。地球は円形なので、場所によって重力も遠心力も異なる。遠心力が最も大きく、重力が最も小さくなるのは赤道上なので、赤道付近からロケットを打ち上げたほうが上昇しやすい。打ち上げが失敗したときのことを考えれば、周りが海であることなども条件に入ってくるので、島であることは最適解である。(『青い海の宇宙港』)

Chapter 7(地震・火山噴火)

■もうひとつ、この作品をいまの時代に読む意味を挙げるなら、それは「日本人とは何か」という問いかけに対する答えが、時と状況によって変わるからではないか。作品が書かれた1970年代と、この2020年代では、日本人の心のあり方も、国際社会のあり方も大きく異なっている。いま・ここで、日本が沈没したら、われわれはどのような選択をし、どのような道筋をたどるのか。『日本沈没』をいま読み直すことは、そうした問いかけをスタートさせることでもある。(『日本沈没』)

■作中では、宮崎で発生した噴火による火砕流・火災サージの警報区域地図が広すぎて、予備知識のない国民は火砕流の危険性も、警報区域が何を意味しているのかも理解できないまま、逃げ遅れてしまう状況が描かれている。想定外の災害に見舞われたときは、このように知識の有無で生死が決まってしまうこともある。(『死都日本』)

Chapter 10(戦争)

■ヴォネガットはこのようなスタイルでしか、自身が体験してきた圧倒的な戦争体験を表現することができなかったのだろう。人間は、あまりにもむごい現実を直視できないこともある。「そういうものなのだ」(『スローターハウス5』)

Chapter 12(管理社会・未来の政治)

■同じディストピア小説の『一九八四年』と比較したとき、その特色はさらに際立つ。『一九八四年』が描く未来は、誰が読んでも恐ろしいことがわかる。一方、『すばらしい新世界』は、一見この世界の何が問題なのかをはっきりと指摘することが難しい。読者に考え込ませる作品なのだ。(『すばらしい新世界』)

■脳も自己も虚構の一部である以上、本当にそこから逃げ出したいなら、自分自身から逃げ出さなければならない。そこまで含めた先鋭的な結末を、この『すばらしい新世界』は1世紀近く前に描き出していたのである。(『すばらしい新世界』)

■誰もが私生活を公開するようになれば犯罪は減る。だったら、みんながカメラを身につけるようになればいいーーそれは理屈としては正しいが、当然ながらプライバシーの侵害だという批判も起きる。すると、そんな批判をするお前は何かやましいことがあるのかと、逆の批判が起こる。そして、政治家を筆頭に、市民は自らの潔白を証明するために積極的に透明化を推し進めていくようになる。(『ザ・サークル』)

Chapter 15(時間)

■つまり「タイムトラベル」の歴史はたかだか100年しかない。どうやら16〜17世紀あたりまでの人類は、「未来/過去に行ったらどうなるんだろう」とは考えなかったようなのだ。

■トマス・モアが『ユートピア』を出版した1516年当時、未来に関心を持つ人などほとんどいなかった。未来の世界が現在と大きく違うものになるという発想がなかった。(『タイムトラベル「時間」の歴史を物語る』)

■「普通の人々」は、手遅れになるまで問題に気がつかないし、時代に翻弄されていく。それは過去だけではなく、いまを生きるわれわれにも当てはまる話だ。そして、3作どれもに共通することだが、そうした善も悪も、賢さも愚かさも混ざりあった普通の人々であっても、勇気を示し自己犠牲をもためらわない、英雄的行動に出ることもある。(『オックスフォード大学史学部シリーズ』)

Chapter 16(ファーストコンタクト)

■ちなみに、SFに初めてチャレンジしたいという人から、「最初に読むならどれ?」と聞かれたら、筆者は本作をおすすめする。SFの王道といえる地球外生命とファーストコンタクトの物語であり、文章は本書で取り上げたすべての作品の中でも群を抜いて読みやすい。何より、科学の本質的な魅力に気づかせてくれる作品だからだ。(『プロジェクト・ヘイル・メアリー』)

Chapter 17(地球外生命・宇宙生物学)

■また、特筆すべきは本作が起業家や作家に多大なインスピレーションを与えてきたことだ。イーロン・マスクは14歳で、「人生の意味や目的を完全に」見失ったことがあるというが、その時期に読みあさった本の中でも、とりわけ大きな影響を受けたのが、この『銀河ヒッチハイク・ガイド』だったという。(『銀河ヒッチハイク・ガイド』)

おわりに

■56作(シリーズ)を紹介してきたが、この最も重要な選定基準は「筆者自身がのめり込むように楽しんで読んできたSF」であることだ。すべてはこの「楽しい」という気持ちから始まるのだと僕は思っている。結局のところ、夢中になって読んだ本だからこそ、人は影響を受け、変化するのではないだろうか。

コメント

SF作品というと自分の中では小学校の頃に読んだことがある星新一のショートショートが真っ先に思い浮かぶ。

読書が取り立てて好きでもなかった自分にとっては星新一のSF的な側面よりも、物語の短さに惹かれて当時読んでいたようにに感じる。

そんなわけでSF作品にハマることもなく歳を経てしまったわけであるが、読書好きな人がSF作品をオススメ本として挙げているのを目にして気になることは何回かあった。

そのなかでも爆笑問題の太田光氏が『情熱大陸』のなかで、確かジュンク堂書店を見て回っているときに『タイタンの妖女』をマスト本として紹介していたのが記憶に強く残っていた。

また予備校の英語の授業で文章中にカート・ヴォネガット・ジュニアが出てきたときに、講師の人が「重要な作家」だと言及していたのを妙に覚えていたので、カート・ヴォネガット・ジュニアについては「読まないといけない」とは思っていた。(が、結局読めていない)

一口にSFといってもこの書籍の分類でいうと17種類もある。恥ずかしながらこの種類の豊富さを今回初めて知った。

本書に掲載されている56作品のうち、自分が読んだことあったのはたったの2冊のみ。

その2冊は『一九八四年』と『すばらしい新世界』であり、どちらも本書のなかでの「管理社会・未来の政治」に分類されており、自分がSFのほんの一部分にしか触れていないということを痛感した。

自分としてはSFの概観図を把握できるというのが本書の最大のメリットに感じた。

もちろん個々の作品についても、「どんな作品か」と「どこがスゴいのか」がコンパクトにまとめられており、それも門外漢としては非常に役に立つ。

こうやって色々な分類があるものの、個人的には宇宙開発や地球外生命体とかの話よりも、管理社会や気候変動などの方に興味がありそうということも、うっすらとわかってきた。

この本を出発点として少しずつSF作品にも触れて視野を広げていきたい。

400ページを超える厚めの本であるが、1作品の解説は10ページに満たないので、細切れにでも読みやすい。

SFに少しでも興味がある人はもちろん、SFにまったく興味ない人にこそ視野を広げる意味で手に取ってほしい。

一言学び

どうやら16〜17世紀あたりまでの人類は、「未来/過去に行ったらどうなるんだろう」とは考えなかったようなのだ。


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