読みたいと思ったきっかけ
ここ最近、高松智史氏が書いた一連の書籍を読んでいて、いわゆる「コンサルタント本」に興味が出ていたことから本書も購入した。
内容
目次
目次は以下のとおりとなっている。
はじめに | ||
第Ⅰ部 アナリスト編(私大文系バンドマン。コンサルタントになる) | ||
第1章 | : | 「”速い”はそれ自体が重要な価値だ」― スピードを生む仕事の基礎力 |
第2章 | : | 「ピカソの絵を買う人は値段を見て買わない」― 品質に説得力を持たせる |
第3章 | : | 「自分の限界を会社の限界にするな」― 会社の<集合知>を徹底活用する |
第4章 | : | 「3ヶ月後に何を言えれば成功なのか?」― コンサルタントの型=「論点思考」「仮説思考」 |
第5章 | : | 「お前がいないくらいで潰れるようなチームじゃない」― サステナブルな仕事のスタイルとは? |
第Ⅱ部 ジュニアコンサルタント編(限界労働。その先) | ||
第6章 | : | 「顧客の歴史に敬意を払え」― クライアントを多角的に理解する |
第7章 | : | 「前提を疑え」― 「言われた通りにやりました」に潜む罠 |
第8章 | : | 「あなたが社長ならどうします?」― 「変化」を起こすから価値がある |
第9章 | : | 「作業を切り出せ」― チームにどう動いてもらうか? |
第Ⅲ部 シニアコンサルタント・マネージャー編(ミッションは勝つこと) | ||
第10章 | : | 「真剣にやってその程度なら降格しろ」― マネージャーの絶対条件 |
第11章 | : | 「お前って結局何ができる奴なんだっけ?」― 自分が進化し続ける重要性 |
第12章 | : | 「最高のチームでした」― 周囲を動かすビジョンを持つ |
おわりに |
内容
わたしの気になった箇所について記載する。
■このように、従来のコンサルタントのイメージも急速に変化している時代、それでもなお、コンサルタントのコンサルタントたる所以は、一体なんなのであろうか。その筆頭に挙げられる核心的要素は、「速度」にある、と私は考えている。
■速度を身につけるためには、まずこの「迷子の状態で漫然と作業している時間」を徹底的に排除する必要がある。その第一歩として、1日8時間の作業ロットを2時間単位に分割したい。
■仕事の速度の本質は、物理的な作業スピードもさることながら、次に何が起こるのかを予測して仕事を行う”先読み”にこそあるといえる。鍛えられたコンサルタントの体は、「Aという事象が発生した場合はB」「Cという事象が発生した場合はD」というように、もはや考えたり悩む間もなくインプットした情報はそのまま神経を伝達し、行動に移るようになっている。そのような基本動作の集合体こそがコンサルタントのスピードの正体だ。
■前章でコンサルタントのアイデンティティは、「速さ」であることを述べた。しかし、高速で価値のない資料を量産しても意味がない。速さは正確性や品質とセットでなければならず、両者は決してトレードオフの関係ではない。
■「論点の設定が悪いから会議が紛糾するし、出席者が自由に発言する場になってしまっている。アジェンダがソリッドじゃない。もっと研ぎ澄ませ」と藤木さんから愛のある激励を受けた。
■会議の途中で、上司が「ごめん、これ結局なんで話してるんだっけ?」と”そもそも論”に立ち戻ってしまい、最悪の雰囲気になってしまうことがある。これはこの問題を解くことで、「誰が、何を、どの程度得るのか?」の目的意識がないままに話が進み、迷走してしまっているケースだ。
■休むにもスキルがいる。休むことによる後続作業への影響とリスク、上司や同僚への説明という手間と負担を天秤にかけた時、働き続けた方が、心理的な負担が少ないという状態が頻繁に発生してしまうからだ。
■サステナブルな働き方のコツは、自分の成長を自分で認め、それを周りにも示していくことに尽きる。
■このように気持ち悪さの勘を無視したが故の失敗を、誰もが経験したことがあるのではないだろうか。後々の大きなトラブルを未然に回避するためには、どんなに小さな違和感であっても、言語化し、その違和感の正体を見極めるようにしたい。
■いちいち他人から褒められなければ仕事のやる気が出せないのであれば、プロを名乗る資格はない。プロは自分で考え、自分で行動するものだ。
■人から直接言われるよりも、クライアント自身が対話の中で「気づき」を得て、言語化し、変革の方向性を起案し、具体化する展開が一番望ましい。人は自分で考えて内発的な動機づけを得たものがあってこそ行動へと駆り立てられるからだ。
■大切なことは、チームメンバー1人ひとりが、「あの人の指示はきっとこういう意図なのだろう」と想像できるように暗黙知を積み重ねていくことだ。
■相変わらずボロボロなプライドと生活の中、私は足掻くことに決めた。既に30歳を過ぎてはいたが、考えてみれば社会人生活の4分の1が経過したにすぎず、腐ったまま過ごすには残り30年は長すぎると感じた。意を決して自分自身の不得手なことを1つひとつ潰していくことにした。
■英語コンプレックスの解消にあたって、リーディングとリスニングのみが科目となるTOEICの学習のみでは、ビジネスコミュニケーション上必要となるスピーキングとライティング能力の向上は期待できなかったため、海外大学留学の登竜門でもあるTOEFLの試験対策に取り組んだ。
■この頃、英語学習を通し、ただ無心で何かを継続し習慣化することができる、という自分の強みに気づいた。それを活かし、世界的に売上を伸ばしているクラウドソリューションについて集中的に勉強する時間を作ることに決めた。
■リーダーはチームに対して大義を語れなければならない。少し想像すればわかることだが、仕事を”やらされている”リーダーに付いていく部下はいない。毎日クライアントや会社の役員から叱責され、怒られた仕事をしょんぼりと進めているマネージャーの下で働いていると、自分も惨めな気持ちになるものだ。全く憧れることのできない人の言うことを聞くのは仕事であっても心情として難しい。
■大局的なビジョンは、ただ毎日目の前の業務に時間を溶かしているだけでは絶対に得られないものだろう。仕事以外で、社会と幅広い接点を持つことに意識的に時間を使おう。社外のコミュニティに参加してみるのも1つの有効な手段だ。1人の時間も大切にし、優れた本を読み込み、映画を見て、旅行をし、先人たちの悩み、世界の問題に自分を投影し、社会課題を自分ごととして考えたい。
■絶対にプロジェクトを成功させるという強い信念を持ち続けるために、日々の具体的な行動指針を自身に課そう。誰よりもクライアントのこと、そしてチームのことを自分が考えていると周囲に断言するために、何ができるだろうか。…どこまでやれば自分に自信を持つことができるかを考え、それを日々実行しよう。時には周囲から「なんでそこまでするの?」と言われるかもしれない。しかし、一種の狂気とも言えるような継続的な習慣が、自分自身の仕事に圧倒的な裏付けと自信を与えることになる。
■”狂気がスペシャリティを作り、スペシャリティがキャリアを作る”。効率や勝ち筋という視点だけで自分自身の働き方を選んでいては、唯一無二の存在には永遠にたどり着けない。
■読者のみなさんには、自分はどのようなことであれば、毎日夢中になって継続することができるのかを探しあててほしいと思っている。そこにこそ、あなたにしかできない仕事を生むオリジナルの才能が隠されているはずだから。
コメント
コンサルタントがどういう仕事をしていて、そこで求められるスキルがどんなものか、インプットとアウトプットはどうするのか、そして成果のためにどうコミットするか等々、コンサルタントの一連のWhy、What、Howが具体的に書かれている。
大局的なビジョンの持ち方や、コンサルタントとしての考え方、個々のスキルなどが学べる点で実践的な書籍といえるが、それは本書の魅力の半分だと思う。
もう半分の魅力は著者自身が悪戦苦闘しながら成長していくそのストーリーにある。
右も左も分からない状態から数々の修羅場をくぐり抜け成長していく、その過程が具体的に書かれており、一種のビルドゥングスロマン、教養小説として読める。
その意味で、1冊で二度美味しい。
最近はつくづく、頭の良さ云々も当然重要ながら、長時間労働を続けられる身体の頑健さ、精神的なタフネスさも同等かそれ以上に大切だという考えを持つようになっていたのだが、まさしく本書はそれを証明しているともいえる。
精神的に支障をきたすことなく、寝る間もなく働き続けられるというのは才能に近いものがあり、それを有しているというのは大きなアドバンテージになると思う。
本書の中でも自衛隊出身のコンサルタントも紹介されているが、まさに本物のタフネスさを兼ね備えた人間が生き残るというのは示唆に富む。
ややともすると教育において「良い学校を出て良い就職をするために、とにかく勉強するのだ」という話になりがちだが、そもそもそれだけでは駄目ですよ、という反証にもなっているように感じた(必ずしも皆が激務な業界に行くわけではないけど)。
もちろん時代も変化してきて長時間労働も禁止、抑制され始めてはいるけれど、一部にはその残滓はあるだろうし、そこでは当然ながら体力(それも並大抵でない)が求められる。
このあたりは個人の選択の問題であって、そういう激務な業界を選ばなければいいだけの話でもあるけれど、そういう業界があり、そこで結果を出す人がどこまでコミットしているかを知っていることは重要に思う。
これは多分に、自分が現在長時間労働の環境に漬かっているから持ってしまう感想なのだけど・・・。
コンサルタントの具体的な働き方を学ぶためにも、著者の成長を見る教養小説としても興味深く読めオススメの1冊。
一言学び
狂気がスペシャリティを作り、スペシャリティがキャリアを作る。
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