読みたいと思ったきっかけ
佐藤優氏の著作なので著者買い。
内容
目次
目次は以下のとおりとなっている。
まえがき | ||
第一部 | : | 明日から職場で使える人間関係の極意 |
序文 | ||
第一章 | : | 人脈づくり |
第二章 | : | スキルアップ |
第三章 | : | 管理職になったら |
第二部 | : | 仕事力をアップさせる「時代を読む力」 |
序文 | ||
第一章 | : | 時代を読むための洞察力 |
第二章 | : | 歴史の転換点 |
第三章 | : | 社会の危機と未来の破局 |
第四章 | : | 危機を乗り越えるための考え方 |
内容
わたしの気になった箇所について記載する。
第一部(明日から職場で使える人間関係の極意)
序文
・あまりに大きく外れてしまうと組織そのものから放逐されてしまう。…ですから大きく外れることは論外で、少しだけ外すこと。中心から絶妙な距離感を持つことが、今の厳しい社会を生き抜くためにとても大切になるのです。
第一章(人脈づくり)
・社会に出ると損得勘定を抜きにした人間関係はできないとよく言われます。どうしても利害が絡むので、学生時代の友人のような関係は難しいと。これは、半分は本当で半分は嘘です。仕事の関係であっても、いやむしろ仕事を通じているからこそ、互いを信頼し、リスペクトし合える深い人間関係になることがあります。そこには単なる仕事での付き合いを超えた、仲間意識のようなものが芽生えたりします。
・相手が年上でお金もある人の場合は、どうしても向こうが払うことが多いかもしれません。ただし、一度や二度は甘えても、ずっと奢られっぱなしではいけません。いつもどちらかが奢り、どちらかが奢られているとそれは力関係になってしまいます。
・仕事で使ったお金はできる限り経費で精算すること。仕事のために身銭を切るという犠牲的行為を続けていると、将来自分が偉くなって権限を持ったときに、一気に今までのマイナス分を取り戻そうとする傾向が人間にはあるからです。
・特に誰からも一目置かれるような重要人物となると、周囲にはそのような輩で溢れています。すると「またこいつもか」と思われてしまうのがオチです。重要人物ほど、距離感がとても大事になってきます。
・周囲から疎まれている人ほど、自分を理解してくれる人間に対して親近感を覚えてくれるものです。
・若いビジネスパーソンは上司や先輩から仕事を振られたり、「手伝ってくれ」と言われることが多いでしょう。「今結構忙しいんですけど、やります」とか、「時間がかかりそうだけど、いいですよ」など余計なアピールをする人が結構います。どうせやらなければいけないのですから、まずは「はい、分かりました」のひと言でいい。その後でどうしても忙しく大変であれば、その状況を上司に説明して期限などを相談すればいいのです。
・日本だけでなく、ヨーロッパでもこれらサブカルチャーが今や最も時代を先鋭的に照らし出すものだとされているのです。
第二章(スキルアップ)
・本当の意味で人を動かすということは、相手をその気にさせて自主的に動いてもらうことをいいます。その点で有効なスキルが、相手の「信念の体系」に働きかけるということです。どんな人でも自分の価値観や価値体系を持っています。それがどんなものであるかを見極めた上で、それを後押しする形で促すのです。
・そう考えると、内在的論理を知り、信念の体系をつかもうとする行為は、相手を好きになることと似ているとも言えます。こう言うとそんな単純なことかと思うかもしれませんが、これは深い真理でもあります。相手が嫌いだと、そもそも相手を深く知りたいとさえ思わないでしょう。
・人間が本当に影響を受け、感化されるのは、何かに奉仕したり殉じたりという、自己犠牲の姿に直面したときです。イエスは自らの命を差し出して、人間の原罪を贖いました。その自己犠牲の行為がダイレクトに弟子たちに伝わり、彼らを感化し変容させたのです。
第三章(管理職になったら)
・上司という立場に立つことで、人間理解の方法を学び、組織の論理を学ぶことができる。それはどんなに本を読んだり、講義を受けたとしても学べない貴重なものです。なぜなら全て、実体験を通しての学びだからです。
第二部(仕事力をアップさせる「時代を読む力」)
第一章(時代を読むための洞察力)
・学校の勉強はロジックやレトリックを中心に学ぶので、成績のよい人ほどアナロジーが苦手な人が多い。そこには自由で柔軟な精神の働きが必要不可欠です。ですから、ガチガチの優等生より、少し外れたポジションにいる人の方が、得意な人が多いように思います。
・短期的にほとんど利がないように思えて、長期的には利が生まれるものがあります。得てして長期的な利益というのは、短期的にはマイナスに見えるものです。
・二つの選択肢があったら、面倒な方つまり狭き門を選ぶように私はしています。私自身、結果としてよかったと断言できます。回り道しているようですが、そこで学ぶことは多く、自分の成長につながったと思います。
・このような破滅型のシニシズムとは違って、特に若年層の間で別の形のシニシズムが広がっているのではないかというのが、私の見立てです。浪費や無駄遣いもしなければ、ひねくれている感じでもない。むしろ社会生活に順応しているかのように見えます。ところがその実、学校も家庭も、あるいは就職した先の企業や職場も、何一つ信じているものはないように見えます。
・では今の時代、現代の「宗教」に染まらず、ニヒリズムやシニシズムにも陥らない生き方ができるのでしょうか?確固たる価値観がないと難しいところですが、価値観が見つからないということであれば目的論でもいい。それは、こうなりたいという将来の自分の姿を持つということです。そのモデルになるのが実は、第一部でも触れた女優の小芝風花さんの生き方だと思います。
第二章(歴史の転換点)
・日本の歴史は明治維新で開国して以降は特に西欧列強の歴史と切っても切れないものになりました。近代国家は西欧の歴史の流れと文脈の中で生まれたものです。当然ながら世界史、特に西欧の歴史を学ぶことがとても大事になります。
・1755年11月1日にポルトガルのリスボンを襲った大地震は、津波による死者を含めて約6万2,000人が死亡したとされる。この地震によって、神を創造主としては認めるけれども、人格的・超越的存在としては認めないという考え、創造後の世界は自然法則に従っていくという考え(理神論)が広まった。また、災害復興における国家の役割が重視され、近代国家の災害に対する取り組みという点においてエポックとなった。
・特に国家は状況が厳しくなるほど、ナラティブ(物語)を作りだし、国民を扇動します。かつてアメリカがイラク戦争に踏み切ったのは、「悪の枢軸」であるイラクが大量破壊兵器を保有していて、邪悪な計画を立てているという間違った物語でした。
第三章(社会の危機と未来の破局)
・社会の構造は上の世代がつくったもので、若年層に不利なようにできています。それなので、自分の身を守るということも大事ですが、主張すべきことは主張して社会の構造を変えていかなければいけない。問題は社会の構造を変える気持ちがある人が往々にして自分の能力のスキルアップをやらないということです。それでは説得力を持ち得ません。制度設計を変えていくにはプロフェッショナルな力が必要です。
第四章(危機を乗り越えるための考え方)
・つまり、自然な感覚と感情だけに任せていると、群れをつくり縄張りを意識する私たち人間は、誰もが知らず知らずのうちに不寛容な差別主義者になってしまう可能性があるのです。そのため、啓蒙と教育によって、不寛容(差別)の意識が生じるたびに、意識的に修正していかなければいけません。
・ちなみに、徴税は国家による搾取ではなく収奪です。搾取というのはそれが嫌ならば拒否することができる。ところが収奪は暴力を背景に持つ違法行為で、資本主義社会では原則として認められていません。
コメント
これまで佐藤優氏の著作を読んでいる人であれば、どこかで触れられていた内容が複数あったように感じるはず。
そうはいっても前に触れられていた情報に加えて、新しい情報も加えられているのが佐藤優氏の常人離れしたところ。
以前に何かの記事だったかで、「同じような本は作らない」と語っていたのは、こういうところにも出ているのかもしれない。
本書の内容としては、第一部で人間関係をベースに人脈づくり・スキルアップ・管理職になったときのマインドセットについて触れられている。
どれも具体的な事例があってわかりやすく為になるが、中でもわたしとしては「人間が本当に影響を受け、感化されるのは、何かに奉仕したり殉じたりという、自己犠牲の姿に直面したとき」という言葉が記憶に残った。
宮台真司氏が言う、ひとかどの人物も利他性を有していることが条件としているが、それに共通する。
自分のためではなく、誰かのために行動する。この利他性に人は突き動かされるということは今後の人生においても人を見るときの基準にもなるし、自分自身の指針にもなる。
第二部ではミクロレベルのビジネススキルでなく、よりマクロレベルで時代の趨勢がどうなっていくのかを読み取るためのヒントが提示される。
このなかで享楽的な方向に進む破滅型のシニシズムでなく、社会生活に順応しているようで、実は、学校も家庭も、あるいは就職した先の企業や職場も、何一つ信じているものはない形のシニシズムが若年層に広がっているという指摘がある。
この指摘は自分自身にもやや当てはまる気がする。
何かを強く信じてそれにダイブすることが怖いという感覚があり、それゆえにあまり深く信じることをしない。その姿勢がここでいう新たなシニシズムなのかわからないが、わたしは若干その傾向がある。
でも、確かに自分以外でも若い人たちはこういったマインドを持っている人が多くなってきているようには思う。
その意味でいってもこの指摘も示唆に富む。
この解決策として目的論をベースにした生き方が掲げられており、その事例として女優の小芝風花さんが挙げられているのも意外であったが、彼女の経歴を知って合点した。
本書のまえがきにもあるが、佐藤優氏自身が慢性腎臓病や冠動脈閉塞などで闘病中であり、健康上の問題を抱えている。
佐藤優氏のファンとしてはできるだけ長く活動していただき、より多くの知見を後世に残していってほしいと強く願っている。
一言学び
価値観が見つからないということであれば目的論でもいい。それは、こうなりたいという将来の自分の姿を持つということです。
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