読書レビュー:『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』(エリック・ジョーゲンソン)

読書

読みたいと思ったきっかけ

土井英司氏のビジネスブックマラソンで紹介されていたのを見て興味を持ったのがきっかけ。

最初は本屋で見たときは「買わなくてもいいか」と思ったのだが、本書の英語原文を無料で読めることがわかったので「英語の勉強として使える」と思い、購入することに決めた。


内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

第1部 富 この世界で運に頼らず「リッチ」になるには
第2部 幸福 この世界で最高の人生を歩むには
ボーナス    

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

第1部(富 この世界で運に頼らず「リッチ」になるには)

・努力は富とはほとんど関係ない。週80時間食堂で働こうが、リッチにはなれない。リッチになるということは、「何をするか」「誰とするか」「いつするか」を理解するということなんだ。

・そして(人間関係、仕事、学習など)何に取り組むのであれ、その究極の目的は、複利を得るために全力を傾ける対象を見つけることだとわかってほしいからだ。

・所有権を持たないと、インプットとアウトプットが密接に連動するんだ。つまり君が投入した時間や労力に比例した報酬しか得られない。給料制で働く人のほとんどは、時間を売ってその対価として報酬を得ている。時給が高い弁護士や医者でもそうだ。所有権を持たなければ、寝ている間は稼げない。引退後は稼げない。休暇中は稼げない。働いた時間に比例した、線形的な稼ぎしか得られないんだ。

・無限のレバレッジが手に入るこの時代、純粋な知的好奇心がかつてないほどの莫大なリターンを生むようになっている。だから今儲かっているものを追いかけるよりも、君の純粋な知的好奇心を追求したほうが、キャリアの基盤としてはずっといい。

・君の人生では地位の地位のゲームを避けなくてはならない――怒りに満ちた闘争的な人間になってしまうからだ。誰かを蹴落として、自分や自分に似た誰かを持ち上げるために、君はいつまでも戦いつづけるはめになる。

・引退とは、ありもしない明日のために今日を犠牲にするのをやめることだ。今日がそれ自体で充実していれば、引退していることになる。

・私がお金を稼ぐ上で重要だと考えていることの1つが、「この人を通して取引したい」と人に思わせるような評判を築くことだ。…個性と評判は、君が自力で築けるものだ。

・もし君が最大限のお金を稼ぎたいのなら、もし人生で絶対確実に予想通りにリッチになりたいのなら、最先端のトレンドを先取りして、テクノロジー、デザイン、アートを学び、そして君が本当に得意なことを見つけよう。

・本当に賢い人は、子どもにも説明できると思う。子どもに説明できないのは、わかっていない証拠だ。これはよく言われることだが、核心を突いている。

・君の感情は事実について何も教えてくれない――感情が教えてくれるのは、君が事実をどう判断しているかということだけだ。

・経験の裏づけがなければ、そういったツイートもただの名言集になってしまう。いい言葉だし、しばらくは刺激が得られるし、しゃれたポスターをつくれるかもしれない。でもすぐに忘れ去ってしまう。メンタルモデルとは、要は自分の知っていることを簡単に思い出すための方法だ。

・何かを決めるためにスプレッドシートにイエス/ノーや長所/短所、よい点/悪い点を書き出しているようなら・・・・・・やめておけ。迷ったら答えはノーだ。

・私が人生で何らかの物質的成功を収め、何らかの知性を得ているとしたら、それはひとえにこの読書量のおかげなんだ。現実の人間は1日1時間も読まない。たぶん、1日1分も読んでいないだろう。読書を本物の習慣にすることが、一番重要だ。

・私が読書家だと思っている人の中には、実はあまり賢くない人が多い。それはなぜかというと、夜無料は多くても、間違ったものを間違った順番で読んでいるからだ。

第2部(幸福 この世界で最高の人生を歩むには)

・いつも頭の中で次のことや、その次のこと、またその次のことを考えつづけているのが、不安感の元凶なんだ。君も何もせずただ座っているだけの時間をつくってみれば、よくわかるはずだ。…不安のせいで不幸になっているのに気づくことが大切だ。不安は頭の中をめぐっている雑念に過ぎない。

・欲望とは、「欲しいものを手に入れるまで不幸でいます」という契約を自分自身と交わすことだ。ほとんどの人は、このことを自覚していないと思う。

・前に読んだブレーズ・パスカルの本に、こんな一文があった。「人間のあらゆる問題は、一人で部屋に静かに座っていられないことから生じる」もし30分間満ち足りた気持ちで座っていられるなら、君は成功者だ。これはとても強力な境地だけれど、そこに達する人はとても少ないんだ。

・基本的に、すべてに通じる大きなコツがある。それは死を受け入れることだ。死は私たちに起こる何よりも重要な出来事だ。死を見つめ、逃げずに死を受け入れたとき、人生に大きな意味が生まれる。私たちは人生のほとんどを、死を免れようとしながら過ごしている。私たちの奮闘の大半が、不死を求める営みだといえる。

・「これをするつもりだ」とか「これになるつもりだ」と言うとき、実は君は時間稼ぎをしている。自分に逃げ道をつくっているんだ。それを少なくとも自覚していれば、こういうふうに考えられる。「私はこれをしたいと言ってはいるが、本気じゃない。本気ならただやるだけだ」と。

・プロダクトが市場に受け入れられるまでには長い時間がかかる。誰かと働くのに慣れるには時間がかかる。すばらしいプロダクトを生み出すには、長い時間をかけて磨き抜かなくてはならない。行動は性急に、結果には寛容に、だ。

・最近読まれている本のほとんどは、社会的承認を得るための本だと思う。私の知り合いには、進化論の解説書を100冊も読んでいるのに、ダーウィンは読んでいないという人がいる。マクロ経済学者が世の中にあれだけいるのに、そのほとんどが、経済学の膨大な論文を読みながら、アダム・スミスの本はまったく読んでいないんじゃないかな。

・第一が、読め。読めるものは何でも読め。社会がいいと言うものや私がいいと言うものだけじゃない。読むために読め。読むことを好きになれ。恋愛小説やペーパーバック、コミック、何でもいい。駄本なんて1つもない。片っ端から読め。するとそのうち目が利くようになって、読むべきものや、読めるようになりたいものに自然に導かれるんだ。第二に、読書のスキルと関係しているが、数学のスキルと説得術を身につけろ。どちらも、実社会を渡っていくのに役立つスキルだ。

・怒っているときの自分を観察しよう――怒りとは状況をコントロールできなくなった状態だとわかる。怒りとは、「現実が変わるまで肉体的、精神的、感情的混乱に苦しみます」という契約を自分自身と交わすことだ。

・私の哲学をひと言で言うと、こういうことになる。すべてを結びつける原理としての進化論が、柱の1つをなしている。進化論は人間に関する多くのことを説明する。もう1つの柱が、最古にして最も時間をかけて検証されてきた、人間の心の状態を説明する精神哲学としての仏教だ。

コメント

いわゆる自己啓発本の類ではあるので、簡単に読み終わることができる。

もっともこれはこの書籍がナヴァル・ラヴィカント自身によって書かれたわけではなく、彼の投稿記事、ツイート、対談から構成されたものだからかもしれないが。

ナヴァル・ラヴィカント自身が起業家として、投資家として、ブロガーとして成功しており、今では約30社のアドバイザーや取締役を務めていることもあって、そんな成功者が「富」と「幸福」という二大テーマともいえるものを語っているとなれば話題にならないはずはない。

「富」

「富」の部分でいえば、「もし君が最大限のお金を稼ぎたいのなら、もし人生で絶対確実に予想通りにリッチになりたいのなら、最先端のトレンドを先取りして、テクノロジー、デザイン、アートを学び、そして君が本当に得意なことを見つけよう。」というところにすべてが集約されている気がする。

今後生き残っていく職業としてはサイエンティストとエンジニア(テクノロジー)、アーティスト(デザイン&アート)とよく聞くので、この辺りはやはり大方の見立てとしても間違いなさそう。(これに加えて政治家もいなくならないという話も聞いたことがあるが、どうなのだろう。)

そしてやはり自分の得意なこと。これに尽きる。

好きなこと、得意なことを見つけて、それにフルベットするべきという話も近年はとてもよく聞くフレーズ。

その意味でいうとこちらも大方の見立どおりといえる。

そういう意味では目新しさは感じないが、逆にいえばこのことは、ほぼ確実で間違いない成功のための法則であるともいえそう。

「幸福」

ナヴァル・ラヴィカントの哲学として大きく進化論と仏教が挙げられているのは面白い。

確かに幸福を考えるときに、人間の一見不合理な考え方や感情の理由は進化論から説明されることが多いし、そうでない場合であれば精神哲学としての仏教を頼るのは二段構えとして有効な2つの「ツール」のように思える。

これだけ将来への不安感が増大していると皆が考える社会においては、宗教の持つ役割やそれが果たしてきた歴史的な経緯をもう一度学び直すことは必要かもしれない。

特に政治と宗教の話題が取り沙汰されている現在の日本においては。

また、このブロックで出てくる「『これをするつもりだ』とか『これになるつもりだ』と言うとき、実は君は時間稼ぎをしている。自分に逃げ道をつくっているんだ。それを少なくとも自覚していれば、こういうふうに考えられる。『私はこれをしたいと言ってはいるが、本気じゃない。本気ならただやるだけだ」と。』というのは核心を突いている。

自分も英語のリスニング対策を「するつもり」と言ってずっと先延ばしにしている。

結局これはただの逃げ道を作り、時間稼ぎをしているだけだと言うほかない。

この文章は今の自分にとって耳が痛い。

まとめ

「富」、「幸福」のブロックともにヒントになる考え方が多数掲載されているので、何かしら得るものはあると思う。

「死を受け入れること」といった仏教というか宗教的な考え方?のように思える箇所も所々出てくるところに、ナヴァル・ラヴィカントの哲学として仏教が影響していることが読み取れるのも面白い。

「ボーナス」としてナヴァル・ラヴィカントのオススメ書籍も掲載されている。自分としては結構知らない書籍も多く載っていたので、そのあたりも自分の興味関心を広げる意味で役に立つかもしれない。オススメとして掲載されている物理学系の書籍などは手を出さないので。

また上述のとおり、本書は英語版を無料PDFで読める。

もう一度英語の勉強として読みつつ、内容の復習もしていきたい。

英語ができる方はウェブ上で検索すれば英語版に簡単にアクセスできるので、そちらで読んでみてもいいかもしれない。

一言学び

「これをするつもりだ」とか「これになるつもりだ」と言うとき、実は君は時間稼ぎをしている。自分に逃げ道をつくっている。


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