読みたいと思ったきっかけ
本屋の新書コーナーを見ていたときに発見したのがきっかけ。
英語のスピーキング能力が不足している自分にとって定型表現を覚えることが突破口になるか、という淡い期待を胸にして購入した。
内容
目次
目次は以下のとおりとなっている。
はじめに | : | 英語は「決まり文句」が8割? |
第1章 | : | 定型表現が重要な理由 |
第2章 | : | 奥深き定型表現の世界――その分類と特徴 |
第3章 | : | 4技能を伸ばす定型表現の学習法 |
おわりに |
内容
わたしの気になった箇所について記載する。
はじめに(英語は「決まり文句」が8割?)
・「文法と単語を組み合わせることで、様々な分を生み出せる」という主張は間違ってはいませんが、実際の話し言葉や書き言葉では、文法ルールに則って一から文を組み立てるのではなく、2語以上のまとまりで特定の意味を持つ「定型表現(formulaic sequences)」をつなぎ合わせることが多いと指摘されています。
第1章(定型表現が重要な理由)
・英語における語彙力とスピーキング力の関係を調べた研究では、個別の単語に関する知識よりも、定型表現に関する知識の方がスピーキング力との関係が強いことも示唆されています。つまり、たくさんの単語を知っている学習者よりも、たくさんの定型表現を知っている学習者の方が、スピーキング力が高い傾向にあったということです。
・笠原氏の研究結果は、新しい単語を単独で学ぶよりも、定型表現の中で学んだ方が、その単語がより記憶に定着することを示唆しています。つまり、定型表現を学ぶことで、すでに知っている単語を使いこなす能力が伸びるだけでなく、今まで出会ったことがない単語を覚えるきっかけにもなるのです。
第2章(奥深き定型表現の世界――その分類と特徴)
・学習者が犯すコロケーションの誤りの半分程度が、母語訳に起因するという研究もあります。日本語と英語で表現が異なるコロケーションに関しては、問題集などを用いて意識的に学習するのが良いでしょう。
・固定フレーズの中で意味的透明性がないもの、すなわち構成要素の意味から全体の意味を推測しづらい表現は、コア・イディオム(core idioms)と呼ばれます。例えば、beside oneselfは「我を忘れて、逆上して」という意味ですが、besideとoneselfからフレーズ全体の意味を想像するのは困難です。
第3章(4技能を伸ばす定型表現の学習法)
・リスニング学習のためには、スピードを遅くするよりも、一時停止ボタンを押して意味の切れ目ごとにポーズを置いて再生した方が良いという指摘もあります。
・熟語集で学習する際には、定型表現とその和訳をただ眺めるだけでなく、定型表現から和訳を思い出す、あるいは和訳から対応する英語表現を思い出す練習をしましょう。(専門的には「想起練習」retrieval practiceと言います)。これは、記憶を能動的に想起することで定型表現の記憶保持が促進されるからです。例えば、「come to terms with = 〜と折り合いをつける」という情報をただ眺めるのではなく、「『折り合いをつける』は英語で何と言いますか?」と聞かれて、come to terms withという定型表現を想起することで、記憶がより強固になります。
・「英単語を和訳と結びつけるから、日本人は変な英語を使ってしまう。英単語は英語のまま理解すべき」と言われることがあります。しかし、ジョージ・ミラー氏の研究は、和訳の代わりに英語の定義を使ったとしても、単語の正確な意味範疇を身につけるのが難しいことを示しています。和訳を使うにせよ、使わないにせよ、脱文脈化された状態で単語の正確な意味範疇を身につけるのは困難であり、和訳の使用が諸悪の根源であるかのようにとらえるのは不適切でしょう。
・頭韻を踏んでいる表現に印をつけさせるなど、学習者の注意を頭韻に向ける工夫をすることで、習得が促進されるという研究もあります。新しい英語の定型表現に出会った際には、頭韻が含まれているかをまず確認すると良いでしょう。
・スピーキング練習は話し相手がいない状態で行っても構いません。ICレコーダーに英語を吹き込む練習を3日間行うことで、英語のスピーキング力があがることを示した研究があります。
・定型表現を身につける上で最も重要ポイントは何でしょうか?それは、「英語話者は文法と単語を自由に組み合わせて新しい文を常に生み出しているわけではなく、話し言葉や書き言葉の多くが実は定型表現で構成されている」ということに気づくことだと筆者は考えています。
コメント
定型表現を学習することの利点を8つ具体的な事例とともに紹介し、その後には定型表現を学習(定型表現に限らないが)するのに有益なサイトや書籍なども具体的に挙げながら展開される。
ところどころに頻出表現のリストなども掲示されたりするが、本書自体が定型表現の文例集となっているわけではないのは注意(そんな誤認識を抱く人がいるかはわからないが)。
定型表現といってもイディオム、コロケーション、句動詞などバリエーションもあることを再認識できる。
また学習に資するサイトとして挙げられているものはほとんど知らないものばかりだったので、その点では効果的な学習のための補助ツールを知るのにも有効だと思う。
本書のなかで一番重要と言われているのは「『英語話者は文法と単語を自由に組み合わせて新しい文を常に生み出しているわけではなく、話し言葉や書き言葉の多くが実は定型表現で構成されている』ということに気づくこと」だとされており、その点については本書を読めば十分納得できるはず。
「決まり文句が8割」というのは、逆にいえばそういった表現を知らないと英語がほとんど理解出来ないとも解釈できる。
その意味では、結局知っている英語の定型表現を地道に増やしていく以外に方法はないともいえそう。
語学に近道はないけれども、これだけ便利なツールが増えているのだから昔に比べて英語学習の環境は向上している。
あとは学習者が勉強するかどうか。(これだけ環境が整うと、逆に英語が身についていないのは自分の努力不足に起因すると考えられるようになってしまうかもしれないが。。。)
英語学習に有益なツールやその使い方を効率よくを知ることができるので、そういった英語学習ツールを整えたい人にはオススメ。
一言学び
実際の話し言葉や書き言葉では、文法ルールに則って一から文を組み立てるのではなく、2語以上のまとまりで特定の意味を持つ「定型表現(formulaic sequences)」をつなぎ合わせることが多い。
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