読書レビュー:『観察力の鍛え方』(佐渡島庸平)

読書

読みたいと思ったきっかけ

土井英司氏のビジネスブックマラソンで紹介されていたのを見たのがきっかけ。

自分はクリエイティビティの欠片もないので、そういったヒントを得られればと思い購入してみた。

内容

目次

目次は以下のとおりとなっている。

はじめに    
第1章 観察力とは何か?(観察をめぐる旅への誘い)
第2章 「仮説」を起点に観察サイクルを回せ(5つの具体的なアクション)
第3章 観察は、いかに歪むか(認知バイアス)
第4章 見えないものまで観察する(感情類型と関係性)
第5章 あいまいのすすめ(正解を手放し 判断を保留する)
おわりに    

内容

わたしの気になった箇所について記載する。

はじめに

・インプットの質が良ければ、最終的にアウトプットの質も良くなる。インプットの質を高めるのが「観察力」だ。

第1章(観察力とは何か?)

・思索を開始するときに僕がまず行うのは、辞書をひく、だ。字義を調べる。観察という言葉の意味を紐解くところから始める。

・観察力とは、「客観的になり、注意深く観る技術」と、そして得たことを、「組織的に把握する技術」の組み合わせと言えるかもしれない。…本書は、「客観的になり、注意深く観る技術」のほうに重点を置いている。

・いい観察は、ある主体が、物事に対して仮説をもちながら、客観的に物事を観て、仮説とその物事の状態のズレに気づき、仮説の更新を促す。一方、悪い観察は、仮説と物事の状態に差がないと感じ、わかった状態になり、仮説の更新が止まる。

・僕がフィクションを好む理由の一つに、読み手の認知のあり方が変わると、立ち上がってくるエピソードの意味がガラッと変わるということがある。

・観察を阻害するといったとき、ここで紹介した3つの要因ーー認知バイアス(=脳)、身体と感情(=感覚器官)、コンテクスト(=時空間)がバグを起こしやすいと意識しているだけで観察の精度は変わってくる。僕は、この3つを総称して、「メガネ」と呼んでいる。

・観察力が鍛えられてくるとインプットの質は上がる。特別な努力をしなくても、日常的に質の高い情報がどんどん蓄積される。そしてインプットが溜まってくると身についてくるのが、俗にいう「感性」と呼ばれるものだ。感性が上がると、今度は気づくことの質と量も圧倒的に増える。アウトプットの質も上がってくる。この軌道に乗りさえすれば、指数関数的に成長していくのみだ。観察力こそが、様々な能力につながるドミノの一枚目。

第2章(「仮説」を起点に観察サイクルを回せ)

・具体的に行動を起こすときには行動サイクルというものがある。行動サイクルとは、全ての行動は「計画」→「実行」→「振り返り」のプロセスを踏むことになるというものだ。

・感じたことを言葉にするのは、簡単にできることではない。自分の心の中で起きていることすら、よくわからない。だから観察力を鍛えるのだ。

・仮説は言葉から始まる。そして、僕は言葉の力を信じている。

・観察には仮説が不可欠だが、何も思い浮かばないときは、言葉にすることだけを目的に観察を始めるといいと考えているのだ。

・事実と自分の感想を分ける練習は、観察力を鍛えるうえで重要だ。自分の解釈、感想を、事実と思ってしまうと、観察は止まる。そして、その勘違いは、かなり起きやすい。

・そもそも人の記憶とは、妄想と変わらないくらいにいい加減なものだと思ったほうがいい。

・どんなフェーズにいる人も、まずは「真似る」。

・オリジナリティとは、型がないのではない。型と型を組み合わせるときに生まれる。いかに遠い型と型を組み合わせるかが革新を生み出す。だから、「革新は、辺境から生まれる」と言われるのだ。オリジナリティがあるものをつくるためには、型を携えて、辺境へ行く必要がある。

第3章(観察は、いかに歪むか)

・僕が20代の頃、その様子を見ていた、早逝してしまった瀧本哲史さんから、こんなことを言われた。「『起きていることは全て正しい』と思うことは大切ですよ」

・人は問題が起きたときに、相手の性格や能力のせいだと考えてしまいがちだ。だが実際は、仕組みや運用に課題があることも多いし、たった一つルールを変えるだけで人の行動がガラッと変わってしまうことだってある。

・本来は、ほぼ全ての人が、その人なりの良さを社会に還元しようと動いている。しかし、良さの概念が、人ごとにずれているから、悪意と感じてしまう。そこにその人の善意を感じ取れる観察力を僕は身につけようとしている。

・俺だったらできると言うよりも、できなくて悔しい!と叫んでる人のほうが僕にはカッコよく感じる。

第4章(見えないものまで観察する)

・物語によって、見えないもの(感情と関係性)に気づく能力を鍛えることができ、僕は現実社会と向き合う準備ができたのだと思う。

・まず感情とは、勝手に自分のところにやってくるのではない、ということは知っておいたほうがいい。自分でその感情を選んでいることに意識的である必要がある。

・感情とは、意思決定を素早くするための道具でしかない。あなたの感情は、無意識に、思考の癖で、自らが選んでしまっているものだ。

第5章(あいまいのすすめ)

・ここからは、「学ぶ」という行為を2つに分けてみたい。1「スキルを身につけることで、無意識に行えるようにする学び」、2「身につけているスキルを、意識的に行えるようにする学び」

・人は、わかりたい。本当の正解などないとしても、正解の側に立ちたい。あいまいさから抜け出したい。バイアスにしても、感情にしても、意思決定を無意識で行うようにする行為だ。できるだけ無意識で動きたいというのが人の本能なのだ。本能は、人が無意識の自動操縦で生きられるように導いてくる。観察とは、それらの無意識で行っている行為を、すべて意識下にあげること。つまり観察とは、本能に抗おうとする行為だ。

・「絶対」の反対は「相対」ではない、「あいまい」と僕に教えてくれたのは、コミュニケーション論の研究者、若新雄純さんだ。相対的とも、客観的ともちょっとニュアンスが違う「あいまい」。

・ネットにより知っていることの価値が下がり、同時にわかることの価値も下がった。あいまいな状態、わからない状態で、どう思考し、行動するのかの価値が、相対的に上がってきている。

・コーチングを学んでいると、「わかる」という言葉を簡単に使ってはいけないことを知る。「わかる」は相手を傷つけることがある。

・「あいまいを受け入れること」「いること」「今に集中すること」「目的を手放すこと」これらは、僕にとって別のことだった。しかし、この本を書きながら、その4つが密接に結びついていて、同じことを違う側面から描写しているにすぎないと気づくことができた。

・本当に創造的になるのに必要なのは、夢中ではなく、退屈だと今は考えている。

コメント

もともと話しベースで書かれたものであるためか、文章が読みやすく感じた。そして何よりも内容が抜群に面白かったので一気に読み終えてしまった。

途中で『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』などの漫画も挟まれていて、それも内容の理解の助けになった。

観察力を鍛えるために必要なことが書かれているものの、中身としては人間の認知バイアス、正解主義からの離脱などいかに固定観念から抜け出すかのヒントが書かれているように感じる。

一方で型の重要性も説かれていて、型を身につけそれを持って分野の遠い型と融合させるときに創造的なものが生まれるという。

一見すると型は創造性の対極にあるように思えるが、考えてみれば昔の伝統芸能などを見れば合点がいく。

先代や師匠の型を完璧に身につけ、そこから自分のオリジナリティを創出する。そのプロセスに型は必要不可欠。

自分も段々と年を重ねてきているので、どんどん考えが硬直化する可能性は高い。そうして柔軟性を失うと一つの正解に固執する正解主義に陥りがちだ。

正解主義に陥り、正解のない状態にストレスを感じ、「正解」を求めて安易な言説に飛びつきたくなってしまうかもしれない。

そういった事態を避ける意味でも、本能に抗おうと観察力を鍛え、あいまいを受け入れる姿勢を持ちながらも、型はしっかりと身につける、という態度で日々を過ごす必要がありそう。

でもこれってかなり難しい考えであり、思考であり、行為態度だよね。。。

一言学び

観察とは、本能に抗おうとする行為。


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