読みたいと思ったきっかけ
土井英司氏のビジネスブックマラソンで紹介されていたのがきっかけ。
『ビジョナリーカンパニー』のシリーズはずっと読みたいと思っていたのだが、なかなか手を付けられていなかった。そんななかで新作が出たので、このタイミングで読んでみたいと思った。
内容
目次
目次は以下のとおりとなっている。
第1章 | : | ビルと私の物語 |
第2章 | : | 最高の人材がいなければ最高のビジョンに意味はない |
第3章 | : | リーダーシップ・スタイル |
第4章 | : | ビジョン |
第5章 | : | 幸運は諦めない者に訪れる |
第6章 | : | 偉大な企業をつくるための「地図」 |
第7章 | : | 戦略 |
第8章 | : | イノベーション |
第9章 | : | 卓越した戦術の遂行 |
元々ジム・コリンズとビル・ラジアーが共著として執筆した『Beyond Entrepreneurship』という本が1992年に発行されていたが、その本は日本で未翻訳となっていた。
今回の『ビジョナリカンパニーZERO』は『Beyond Entrepreneurship』に新たに加筆を加えて再出版され、それが日本語に翻訳されたという経緯になっている。
新たに追加された文章のページは白色に、オリジナル版の文章は灰色になっている。
内容
わたしの気になった箇所について記載する。
第1章(ビルと私の物語)
・「すばらしい人間関係を見分ける方法はあるのですか」と私は尋ねた。ビルはしばらく考えて、こう答えた。「2人に『この関係でどちらのほうが得をしているのか』と聞いて、両方が『自分』と答えるかどうかだ」
・自らの成功をお金で測ると、必ず敗者になる、と。人生における成功の真の評価基準は、どれだけ有意義な人間関係を築くことができたか、そして自分のコアバリューにどれだけ忠実に生きることができたかによって決まる。
・自分のしていることを心から楽しみ、愛すること、今後何十年も生きるかもしれないし、明日死ぬかもしれないという矛盾を抱えながら生きることの大切さだ。
第2章(最高の人材がいなければ最高のビジョンに意味はない)
・何よりも大切で、絶対に失敗してはならないのが「最初に人を選ぶ」原則だ。あらゆる事業活動のなかで正しい人材をバスに乗せること以上に重要なものはない。
・真に偉大な企業をつくるには、常に重要ポストの90%がふさわしい人材で埋まっているように努力しなければならない。
・リーダーの立場は特権ではなく責任だ。偶然ではなく決断、遺伝ではなく意志を持った行動の結果だ。学び続けることで偉大なリーダーに成長するかどうかは、詰まるところ選択の問題だ。
・金銭的なインセンティブがなければ最高の成果をあげられない人には、偉大な仕事を成し遂げるのに必要な、強烈な内発的意欲や動機づけが欠けているのだ。
・だが突き詰めると、私たちが最大限の力を出し切ろうとするのは、仲間を成功させるには自分が成功しなければならない、仲間をがっかりさせたくないと思うときだ。
第3章(リーダーシップ・スタイル)
・リーダーシップの機能、すなわちリーダーのもっとも重要な責任とは、会社共通のビジョンを明確にし、実現に向けて揺るぎない決意と熱心な取り組みを促すことだ。
・「リーダーシップとは、部下にやらなければいけないことをやりたいと思わせる技術である」
・重要なのは、自分自身のためにではなく、大義のために組織を率いることだ。
・判断をしないことは往々にして、誤った判断を下すより悪い結果につながる。
・一度にひとつに集中すること。そうしなければ、さまざまな問題を抱えることになる。…時間の大部分は最優先事項につぎ込み、それが完了するまでは集中すべきだ。
・自分を何かに強制的に集中させたいとき、効果的な手段がある。働く時間を減らすのだ。
・企業での有効なリーダーシップの要素のうち、もっとも活用されていないものをひとつ選ぶなら、フィードバックだ。それも「ポジティブ(肯定的)な」フィードバックだ。
・心理学の研究では、生産性が高く幸福な人ほど、基本的に未来に対して楽観的であることが明らかになっている。私たちは企業について同じことがいえると考えている。
第4章(ビジョン)
・ビジョンは「コアバリューと理念」「パーパス」「ミッション」という3つの基本要素で成り立っている
・コアバリューと理念は、会社にお指針となる原則と信条の体系、事業と人生に関する哲学を意味する。
・パーパスは、組織が存在する根本的理由であり、コアバリューから生まれる。
・ミッションは、大胆で説得力のある野心的目標であり、明確なゴールと具体的期限がある。達成されると新たなミッションが設定される。
・BHAG(Big Hairy Audacious Goalの略、社運を賭けた大胆な目標)は歴史上の偉大な指導者を奮い立たせ、彼らが人類の進歩を推し進め、人々を団結させるのに役立ってきた。それを「ミッション」と呼ぼうが「BHAG」と呼ぼうが、あまり重要ではない。重要なのは、BHAGの条件を満たす何かにコミットすることだ。
第5章(幸運は諦めない者に訪れる)
・多くの人を見ていて思うのは、成功することに集中するあまり、失敗というプロセスを通じて成長できそうな状況を避けているということだ。
・偉大なリーダーであるかどうかの5割近くは、予想外の出来事にどう対処するかで決まると私は考えている。
・大切なのは、自分ではコントロールや予想できないことへの備えを固め、それを生き延び、運や機会が巡ってきたら最大限生かす強さを身につけることだ。
第6章(偉大な企業をつくるための「地図」)
・営利企業か社会事業かにかかわらず、永続する偉大な組織をつくるためには、規律ある思考をし、規律ある行動をとる規律ある人材が必要だ。
・衰退の5段階とは(1)成功から生まれる傲慢、(2)規律なき拡大路線、(3)リスクと問題の否認、(4)一発逆転策の追求、(5)屈服と凡庸な起業への転落か消滅である。
・偉大な企業の強みは、運の「利益率」にあった。つまり比較対象企業と比べて、めぐってきた幸運からより多くを引き出したのだ。…運の利益率という概念は、幸運は誰にでも起こるものだが、幸運自体が偉大さをもたらすことはないという重要な事実を表している。
第7章(戦略)
・戦略とは会社の現在のミッションを達成するための基本的方法論だ。要するに「私たちはこのようにミッションを遂行しようと考えている」というのが戦略である。
・戦略とは強みを活かすことだと肝に銘じておこう。
・勝利から最大限の成果を引き出そう。弾み車をまわし続けよう。
・明確なビジョンなくして、まっとうな戦略は策定できないということだ。曖昧なビジョンからは曖昧な戦略しか生まれない。
・価格をコントロールできないなら、コストをコントロールしなければならない。
第8章(イノベーション)
・良いアイデアはいくらでもある。足りないのはアイデアを受け入れる力だ。
・小さな実験、失敗、学習、修正をたくさん繰り返すというのが基本的な考えだ。
・クリエイティビティには自立性が必要なのだ。
・ここで組織にまつわるきわめて重要な真実を指摘しよう。「組織には混乱がつきものだ」。あらゆる問題を解決するような万能薬や構造はない。混乱を完璧に抑えようとする試みは、必ず失敗する。
・私は偉大な企業の研究を続けるほど、その最大の強みは確固たるイノベーション能力ではなく、イノベーションを「スケール(規模拡大)」する能力だと確信するようになった。
第9章(卓越した戦術の遂行)
・締め切りは仕事の進捗を後押しする。だがそれも「コミットメント(確約)」がある場合だけだ。
・何より重要なのは、一つひとつの戦略的優先事項を「ひと口サイズ」に、つまりマイルストーン(中間目標、重要な節目)に分割することだ。
・人は仕事の重要性を理解すると、仕事に真剣に向き合うようになる。
・他の人が自分を頼りにしていることを知ると、人は自分の仕事の重要性を理解し、まっとうな仕事をしようと真剣に考えるようになる。
・人はみな、測定される指標に注意を向ける。なぜ人はスポーツを楽しむのか。それはスポーツが私たちの人生で、自分の現状や上達ぶりを客観的に把握できる数少ない分野のひとつだからだ。
コメント
基本的には起業・企業を成功させるために重要なことが記載されているので、凡庸な平社員である自分にとっては目線がかなり高くあるように感じたのは否めない。
ただし、成功する組織の特徴や、リーダーシップのあり方についても、成功した偉大な企業を事例にして述べられているので、そういった点は自分にも有益だった。
企業を導くうえで重要な要素は、結局個人の人生においても重要なことが多い。
例えば自分個人としてのコアバリューを持ち、そこから人生のパーパスを定め、それを基にBHAG・ミッション、戦略、戦術を設定していくことは、自分の人生を「成功」させるためには不可欠なプロセスだと思う。
そのなかでも個人的には最後の9章(卓越した戦術の遂行)の重要性が気になった。
似たようなところでは、これは以前に読んだ『「仕事ができる」とはどういうことか?』でも実行の順番といった実際に手を動かす作業の重要性に触れられていた。
結局どれだけ明確なコアバリュー、パーパス等があっても、それを実行できなければ何も生み出されない。
その意味でも遂行力の重要性については改めて考えさせられた。もっとも自分が仕事ではまだ下っ端で実行・遂行する力が重要なポジションにいるから気になっただけかもしれないが。。。
一言学び
人生における成功の真の評価基準は、どれだけ有意義な人間関係を築くことができたか、そして自分のコアバリューにどれだけ忠実に生きることができたかによって決まる。
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